小学生の高学年は動作の習得に関しては素晴らしいものがあります。「即座の習得」と言われますが、見たものをすぐさまやってのけることができます。例えば、一輔車に乗る事は大人になってからでは大変困難ですが、こどもは難なく一輪車を乗りこなしてしまいます。このような時期に基本に加えて、多様な動作を経験させる事が必要と考えられます。
 例えば、左右の手を使ってのボールハンドリング、バックパス、倒れ込みながらのシュート、各種のフェインと動作など、いろんな動作を経験させておけば、大人になって使いこなせるプレーヤーが出てくる事が考えられます。
 日本としては様々な技術を待つ選手を目指すのか、或いは韓国のように単純ではあるが質の高い技術を目指すのか方向性をしめさなければなりません。日本人の物事に真摯に打ち込む性格から、どちらもできる質量主義の方向でジュニアに対処していくべきであると考えます。全ての選手がゲームで使いこなせないかもしれませんが、様々な技術を経験するなかで、自分の能力に相応しい技術を身に付けて将来使いこなせるプレーヤーが輩出されることが期待出来ます。いまの現状は画一的な指導のあまりプレーヤーの可能性を伸ばしきれていないと思われます。
 しっかりと基本を身に付けた上に個性的な技術をもった選手を育てるために、ジュニアの頃から、各種の技術を基本の上に経験させる事が重要です。

3徹底した1対1の攻防力

ハンドボールは1対1に始まって1対1に終ると言われますが、やはり攻防の究極は1対1の攻防能力の如何がチームの競技力の土台となっています。ゲームにおける攻防の局面は6対6の均衡状況が保たれています。攻撃はその均衡関係をいかに崩してノーマークを作るのか、防御はこの均衡を崩さずに、相手をプレッシャーのかかった状態に追い込むかです。技術・戦術レベルが上がってくると例えば3対2状況を確実に2対1状況に持ち込みノーマークをつくる術を身に付けています。1対1能力の向上が強いチームを作る基礎として横たわっている事を認識しなければなりません。
 シューター対GK、オフェンス対ディフェンスの1対1にはハンドボール競技のエキスが詰まっています。技術、戦術、体力、精神力が極端にまで凝縮されています。その技術・戦術的要素の中に、「読み」と「フェイント」という球技独特の要素もあります。1対1の単純な局面に球技センスを成立されるすべてが凝縮されているといっても過言ではありません。この1対1局面は個人対個人の局面であり、個人能力の優劣がはっきりわかる厳しい局面です。これに取り組む事の重要性、あるいは面白さを指導していく事は、将来、日本が世界に跳び出す基盤を作っていくものと考えられます。

4自立したプレーヤーの育成

日本のスポーツに対する考え方には二つの基盤があります。
 一つは、スポーツを教育として捉え、人間としての自立を促すことです。ハンドボールが出来ても、人としての生き方を求めなければスポーツに取り組む意義はないと言うものです。
 もうつは、そのものを極めるという考え方です。ここに人としての自立とそれに立脚してのプレーヤーとしての自立があります。プレーヤーとしての自立とはゲームにおいて、チームの目指す方向を理解し、役割を果たしていく事です。そのためには次の3つの要素の習得が必要です。

 言い換えれば1対1の攻防力とコンビネーション力です。ここで重要な事は役割の一端しか担えないプレーヤーを育成するのでなく、オールラウンドに攻防できる競技者を育成していく事が、ジュニア期の指導の重要なポイントです。

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(参考資料)
2016リオ・オリンピックにおけるハンドボール男女出場選手の チーム別に見た身長、国際試合出場回数等について
2013男子・女子世界選手権大会出場選手の国別、成績別身長・体重について

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