最下部の層は、日本人の特性です。何事をするにも、日本人である以上、その心身の特性が関与してきます。長所を生かし短所を補いながら競技力を高めていく事が必要です。次の層が、個人に関わる層で、さらに細かく技術、戦術、体力、精神力の基本的な層で構成されています。
 次いで、個人戦術、グループ戦術、チーム戦術の戦術に関わる層ですが、戦術は個人の戦術を基盤として成立する事を示しています。
 最上段の層は、ゲームの運用に係わる層です。ゲームは、そのチームが描いてきたゲーム構想(ゲームプラン)が実現される場です。ゲーム構想はそのチームが目指すゲーム観(おおまかなゲームイメージ)から導き出されます。また、ゲームでは、相手との関係において、より自チームが有利に試合を展開できるように作戦が講じられます。そしてその作戦は、大会を通して策定される戦略によって影響されます。
 ゲームを構成する一つ一つの階層に私たち日本人が、特徴を発揮できるのは何か、その事を考えていく事が、日本人の特徴を生かしたハンドボールにつながるものと考えられます。

注、技術(テクニック)と戦術の区別について

ゲームの中では、技術(テクニック)と戦術とは一体のものとして発揮されますが、ここで言う技術と戦術の違いを明らかにしておきます。
 図3は、一人のプレーヤーがゲームの場におかれた状況を示しています。プレーヤーは目の前が激しく変化する状況の中で何をなすべきかを考え行動します(図3)。いわば解決すべき課題に直面しているわけです。その課題の解決の仕方、あるいは解決のための行動が戦術です。技術はその解決のために用いられる手段です。

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ゲーム場面では技術は課題解決のための道具であり、戦術はその使いこなしと言えます。戦術はゲーム場面の中で解決策を見出すという頭脳的な部分です。技術は動作を繰り返しによって習慣化・自動化されたものであり、身体が覚えたものです。例えばシュートという技術は、特有の運動経過を示しますが、その習得は、身体の動かし方に注意を払いながら動作をくり返す事によってなされます。ゲームの中では、シュートという判断をすれば、動作に注意を向ける事はなく、自動的になされるものです。技術の練習は、相手なしでも可能ですが、戦術の練習は相手や味方をつけてのゲーム場面を想定して行われます。

4.日本人の精神的特性を基盤として

ゲームに直接関係する技術や戦術、作戦などすべてのチームや個人の行動は、日本人としての心身の働きです。日本という国に生まれ育ったものの考え方がありそれに影響されるものです。
 図2の土台の部分に日本人の特性を置いているのはそのためです。日本人のハンドボールを考えるとき、その土台となる日本人の考え方、国民性を考えざるを得ません。日本人は、自我が弱く個が確立していない、集団志向的、モラルは高いなどとよく言われている事です。また「和を持って貴し」は日本人の生き方を表したものであるともいわれます。これらの精神はスポーツにとってマイナスであろうか。集団的思考、モラル、和といわれるものは、スポーツにとってなくてならない精神であり、これを長所としなくてはならないものです。チームスポーツにおける和は、仲良しクラブ的な表面の捉え方をすればスポーツの場面でマイナスに作用する事もありますが、大きな目標をもつ集団の和というものは、それが発揮されればとてつもない力を発揮します。

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(参考資料)
2016リオ・オリンピックにおけるハンドボール男女出場選手の チーム別に見た身長、国際試合出場回数等について
2013男子・女子世界選手権大会出場選手の国別、成績別身長・体重について

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