1.はじめに

本稿は、リオオリンピックのハンドボール出場国の選手の身長、体重、年齢、国際試合出場数と得点、左利きの選手数を国別に統計し、各国の平均的な選手像を調べたものである。
参考として、日本男女ナショナルチームのリオオリンピックアジア予選時のデータを載せている。
研究目的や資料の入手等については、下記の稿を参考にして頂きたい。
リオオリンピックのハンドボール出場選手の身長、国際試合からみた平均的な選手像について
(参考資料)
2013男子・女子世界選手権大会出場選手の国別、成績別身長・体重について

2.結果とまとめ

1)男子

height-graph 男子国別体重 男子国別体重 男子国別年齢男子国別年齢 男子国際試合数男子国際試合出場数 男子国際得点 男子国際得点

表6 左利きの人数

男子利き手

2)女子

women-height-table 女子身長 女子体重

女子体重 女子年齢 女子年齢 女子国際試合数

女子国際試合数 女子国際得点数 女子国際得点数 女子左利き

3.結果

1)男子

・身長は上位5ヶ国までヨーロッパの国であり、平均が190cmを越え、フランスを除いて195㎝と全体の中で高い数値を示している。中位、下位はエジプトの186㎝を除いて190㎝前後にある。200㎝以上の超高身長の選手を擁するチームは8ヶ国あり、205センチを越える選手を擁するチームは4ヶ国ある。上位のチームはすべて200センチをこえる超高身長の選手がいる。
・体重は身長に比例し、上位は95㎏を越えている。全体の中ではエジプトの体重が低く、他国に比べて細身の選手が多いようである。
・年齢は26才から31才の間にある。30才を越えている国がポーランドとブラジルである。21才以下の若手を入れている国はフランス、ドイツなど6ヶ国である。38才を越えている超ベテランを入れている国は、フランスなど4ヶ国である。
・国際試合出場数の平均が100試合を越えている国はデンマークなど5ヶ国で、その中にエジプト、チュニジア、アルゼンチンのヨーロッパ以外の国が含まれる。
・国際試合での得点が600点以上の選手を擁している国は、デンマーク、フランスなど6ヶ国で、ヨーロッパ以外の国ではエジプトとチュニジアのアフリカ2ヶ国である。
・左利きの選手の数は2人のアルゼンチンを除いて各国とも3,4人である。

2)女子

・身長は最高のロシア177.6㎝、最低のアルゼンチンの173.2センチの間にあり、その差は4.4センチである。男子の最高と最低の差10.4㎝に比べると小さい。190㎝以上の高身長選手を擁している国にスペインとアルゼンチンがある。
・体重は67.4㎏から75.5㎏間にあり、身長と相関がある。
・年齢はスペインの30.4才を最高にアルゼンチンの25.6才が最低であり、多くの国が28歳前後にある。35才以上のベテランを登録している国は中位、下位の7ヶ国である。最高齢は43才を登録する韓国である。22才以下の若手を登録している国はスペイン、スウェーデンを除く10ヶ国である。
・国際試合出場数は、上位ほど多い傾向にある。200試合以上の出場数を要する国は、ノルウェー、スペイン、ルーマニアのヨーロッパ3ヶ国である。
・国際試合での得点は、出場数に比例している。アンゴラ75.3点を最下位に、他の国は200点以上である。800点を超える選手を擁する国は、前述の出場回数が200試合以上の選手を擁する3ヶ国である。
・左利きの選手は、男子に比較すると2人のチームが多く、4人以上擁するチームが4チームある。その中にあって、フランスは6人の左利きの選手を擁している。尚、リザーブの2名も左利きであった。フランスは結果として多くなったのか、戦術的意図があってそうなったのか実際の試合を観察する必要がある。 (トーナメント戦におけるスペイン、オランダ戦において、左利きを3人同時にコートに出すなどして特別な戦術を試みることは見られなかった)

4.まとめ(特に身長について)

この稿では、形態面である身長、体重以外の要素として年齢や国際試合の出場数、得点数などからリオオリンピックの出場した各国の状況を推察してみた。

世界におけるハンドボールの競技力は、ヨーロッパの優位が優位であることは誰もが認める事実である。その理由は、ハンドボールの発生がヨーロッパであり、他の大陸より普及が進み、競い合うことにより競技力が高まり、他の大陸より優位性を保ってきたことは容易に推察できる。ただ、競技力の優位性を保ってきた要因の一つに、身体的優位性すなわち身長の優位性を挙げることができる。

身長は民族や人種ごとに、グループ化されることは明らかなことで、北欧、中欧、東欧はもっとも高身長なグループである。世界一高身長であるオランダ男子は平均181.7㎝、女子デンマークで167.9㎝あり、日本の男子171.6㎝、女子158.5㎝と比較して、それぞれ10㎝,12㎝の差がある。ハンドボールの代表チームの平均はそれぞれの国の平均より男子で約15㎝高く、女子で12-15㎝高いところにあり、それぞれの国のなかでも大きな人が選手になっているが、民族、人種による身長差の壁が横たわっている。

日本人が高身長のチームと試合をすると日頃の試合状況とは異なって、前が相手の身体に遮られて見えない、インターセプトされるはずがないパスに長い手が伸びてインターセプトされる、手が大きいのでボールハンドリングやテクニックが日本人的なものと違ってくるなど、習慣化された行動では通用しない場面に度々出会うことになる。

この身長差を乗り越えるためには、高身長のチームとの試合、則ち国際試合を多くするなど、高身長に対応できるプレイの習慣化をはかることが必要となる。それに加えてスピード、パワーやスタミナなどの体力、そして技術、戦術や精神的な要素をいかに高めるかにかかってくる。機能的な体力面、基本的な技術や戦術の徹底、それを土台とした日本の独自的な技術や戦術の構築が求められるわけである。

(参考資料)
2016リオ・オリンピックにおけるハンドボール男女出場選手の 身長、国際試合からみた平均的な選手像について
2013男子・女子世界選手権大会出場選手の国別、成績別身長・体重について
ハンドボールの発展を願って-日本が目指すハンドボール-

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