それだけに、チームの和を保つために個人は人間力や競技力が厳しく求められるものです。集団がまとまり、いったんやるとなれば、チームのために犠牲的な精神も厭わないところもあり、ものすごい力を発揮する事を経験しています。
 日本はスポーツを教育として行ってきた側面があってか、技術的なものの極めとともに、人としての生き方を重ねてみるところがあり、生真面目な取り組み姿勢を持っています。スポーツに礼儀正しさ、思いやり、フェア、忍耐、克己等の精神性を求めるなどはそのためですが、このことは日本のスポーツ文化として誇りに思うところであり、これからも大切にしていかなければならないことです。
 世界で日本人が劣勢に立っているのは、形態的側面だけです。いつまでもその事を嘆いていてはいけません。ハンドボールはまだ世界の頂点に立った事はありませんが、日本人が本来的にもつ精神的な特性を基盤として、ハンドボールの競技力を構成している要因の追求し、現状を分析して課題を克服していけば世界の頂点に立つ事が必ずできると確信しています。

5.目指すゲームの全体的なイメージ

日本人の特性から目指す方向として次のようなハンドボールのゲームイメージが浮かびあがってくる。

6.目指すゲームを実現できる前提
一基本の徹底についてー

日本人なら目指せるであろうという全体的なゲームのイメージを前述したが、チーム一丸となり、粘りと技術を発揮して、どんなことがあっても勝負をあきらめないハンドボール、そんなハンドボールが日本の個性として浮かび上がってきてほしい。そのためには、ハンドボールの基本が徹底される事が前提になります。

7.基本について

基本の大切さは、言うまでもない事ですが、基本の大切さを強調するあまり、基本をゲームに取り込んでいく戦術面の重要性をなおざりにしている面があります。基本とは一般的には、個人的な技術を指しています。パスやキャッチやシュートなどの個人の技術です。
 ハンドボールはチームゲームであり、チームが実現しようとしているゲームの構想のなかでその技術が発揮される事が必要です。日本は個人の技術の追求は得意としているが、戦術面の追求は不十分です。1997年デンマークからアランルンド氏を招いての講習会の際、冒頭に話されたことは、ゲームの考え方(Philosophy of Game)であり、どのように考えてゲームをするのかという全体論であった。ここにある考え方は、ゲームをどのように考えトレーニングしていくのかというもので、戦術が大事であるということでした。「日本人は技術を得意としているが戦術は苦手である」と皮肉をいっておられたが、ある面を鋭く指摘しています。
 日本のスポーツは、歴史的に見て、武道や個人競技が中心として発達してきた歴史的経緯があります。技術や対人技術を中心とした指導が得意であるのは仕方のない事ですが、ボールを中心として行われる集団ゲームは技術とともに戦術が重要な要素です。

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(参考資料)
2016リオ・オリンピックにおけるハンドボール男女出場選手の チーム別に見た身長、国際試合出場回数等について
2013男子・女子世界選手権大会出場選手の国別、成績別身長・体重について

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