2多彩な技術

北京オリンピック男子最終予選で日本とクロアチア戦で、クロアチアのセンタープレヤー・バリッチのシュートにはすごいものがありました。右バックコートの位置で身体を右に倒れ込みながら床すれすれの位置からリリースしたボールはゴールの左上に突き刺さったのです。
 この選手が見せるプレイはハンドボールの攻撃のセオリーを見事に演じきっています。シュートを狙いながらのパス技術、シュートのバリエーションなど日本のプレーヤーがみ身に付けなければならないものです。
 日本、韓国、デンマーク(女子)の技術を比較した資料があります(図5稲次彩1995筑波大学体育専門学群卒業論文)。この資料から、デンマークの選手は、いろいろな技術を持ってゲームで対処している事がわかります。
z-95

 2004年韓国とデンマークが決勝で第2延長までもつれ込み7mスローコンテストになった試合があります。ここでみせたデンマークの技術の多様さ、韓国のスピードと研ぎ澄まされた1対1の技術は今なお勝負のすばらしさとともに印象深いものです。
 デンマークは、形態やパワーの優位性だけでなく、あわや敗戦かと思われたところでランニングシュートやアンダーハンドシュート、あるいは右足でのロングシュートという高度な技術をはなって窮地をしのいでいます。
 一方韓国の選手は、切り込みのスピード、素早いパスでデンマークのディフェンスを分散させ、鋭い1対1を駆使してシュートにつなげています。技術の数は多くはありませんが、技のスピードと動きの質に格段の高さを持っています。それに比べてみると日本の選手には世界に誇れる何かが欠けています。この原因は、ジュニアからの選手の育成方法にあると考えられます。
 デンマークに留学しチームに所属して選手活動をした人からの手紙に「・・・先日子供たちにハンドボールを教える機会があり、107人もの子供たちが集まりました。彼らはしっかりと自分のボールを持っており、教えるまでもなくどこでおぼえたのかバックパスやら、ジャンプしてまた下からシュートを撃ったりなど、とにかく見よう見真似、あらゆることを遊び半分でやってのけていたので、私自身感心してしまいました。・・・・」とあり、こどもがいろんな動作でハンドボールを楽しんでいる様が目に浮かびます。デンマークと日本では環境が違い、地元で所属するクラブチームの試合のみならず国際試合も見る事が出来ます。トップレベルの選手が繰り出す技術や戦術を目の当たりにしている環境が、こどもにさまざまな技術のイメージを抱かせている事は容易に想像できます。またこどもの育成方法にも注目をしなければなりません。
 1994年デンマークからIHF講師アランルンド氏を招いて講習会を開催した際にデンマークのジュニア育成法のーつとして、氏は「ハンドボールの技術、金銀銅」のビデオを紹介しました。これは高度なものから初歩的なものまで段階別に基礎的な技術を示して、個人がその習得を目指すものです。日本ハンドボール協会でもその日本版が最近DVDで出されています。ぜひ参考にしていただきたいものです。

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(参考資料)
2016リオ・オリンピックにおけるハンドボール男女出場選手の チーム別に見た身長、国際試合出場回数等について
2013男子・女子世界選手権大会出場選手の国別、成績別身長・体重について

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