ハンドボール研究 2010年 第12号
大西武三
第一回ハンドボールコーチング研究会が開催されたのは2003年3月、熊本の山鹿でした。平岡秀雄氏が中心となって発足したこの研究会は8回目を迎え、若い参加者と発表者が増え、今後の日本のハンドボール界の発展を考えると頼もしい限りです。
この研究会の意義は現場で発生する諸問題や課題を研究することによりコーチングの質を高めていくところにあります。ハンドボール競技の指導はいかにあるべきか、このことを通して人間が待つ可能性を引き出していくにはどうしたらよいかなど、まだまだ研究は不十分でこれから研究を進めていく必要があります。
研究は、いろんな観点、視点からハンドボールを観察、研究していくことによってハンドボールの構造や魅力が浮き彫りにされてくるものです。特に、ここに参加されている研究者は、現場で実際に指導に当たっておられる方々であり、机上の理論でなく真に現場に役立つ研究になるものと期待されます。
日本として「目指すハンドボール」、すなわち、日本人の心身の可能性を最大限に引き出すハンドボールとはどんなハンドボールなのか、これを今一度考えてみたいと思います。
ハンドボールも日本に導入されて88年、日本ハンドボール協会が設立されて72年が経過しています。この間、多くのハンドボール関係者によって、競技力の向上と普及がなされてきました。競技力の面については、小学生から一般まで大会も整備され、また国際的な大会にも数多く参加し、日本のハンドボールの特徴が形作られてきました。しかし、日本のハンドボールのあるべき姿や目指すべき方向が、鮮明な形として描かれ示された事はありません。
現在日本には競技者、指導者、レフェリー、役員等を含めて10万人以上の登録者がいます。これらの人々の日々の活動が日本のハンドボールの活動であり、各人が意識する、しないに関わらず日本のハンドボールの盛衰を握っています。全ての指導者がどのようなハンドボールのイメージを持って日々指導しているのかに関心を払わずにはいられません。一人一人の日常の活動が、それぞれのチームの競技力の向上につながり、結果として日本の競技力の向上に繋がっていく事が、国際的な活躍へと繋がります。
日々活動の中心である競技力向上は偏にリーダーである指導者にかかっているといっても過言でありません。それぞれの指導者にしっかりとしたチーム育成の方向性を持って指導する事が求められています。その結果として日本的なものが生まれでると考えますが、日本の現状は、ハンドボールに携わる指導者に専門的な指導能力を育成する環境が不十分です。
P.1
(参考資料)
2016リオ・オリンピックにおけるハンドボール男女出場選手の
チーム別に見た身長、国際試合出場回数等について
2013男子・女子世界選手権大会出場選手の国別、成績別身長・体重について