すなわちセットでは、低く位置どる3—2—1(ローポジション)を基本的システムとし、情況に応じて、高く位置どってプレスする3—2—1(ハイポジション)、厄介な敵方選手に対してトップが特別な役割を演ずる変則5—1、そして全員がゴールエリアライン付近に一線に位置どる6—0といったように、システムを変形できるように準備した。また戻りでは、マンツーマンを中心とした中盤でのマークチェックと自陣のゴールエリアに戻ってからつめるといった二種類のシステムを準備した。ゲーム経過中のシステムのチェンジの合図は、監督からリードオフマンに送ることにした。敵情分析のための僅かな情報は、TG大学の全試合結果と、チームに全国大会出場選手が数名いることに加え、一試合平均10点以上取る左利きエース10番(右45度)が存在するというだけであった。

〈特殊ゲーム構想〉 

一般ゲーム構想を基に、特殊ゲーム構想を練ることができたのは、大会初日の敵情分析を終えてからであった。敵方チームのゲーム観察のために、選手たちには日頃から、ビデオの撮影はもとより、簡易なゲーム観察用紙を持たせて、それに必ず筆記しながら観るように指導してきた。とりわけ観察課題として、チームの特徴的な戦術に加え、ゴールキーパーを含め、自分と向い合う敵方選手の特徴を記述させるようにしてきた。図2は、筆者の当日の自由観察に基づく記述である(図2)

試合前夜のミーティングでは、全員でビデオを観察しながら、運動感覚能力を総動員して、特殊ゲーム構想を練り上げた。いつも、できるだけ練習でやってきたことを変えることなく対応するようにしてきた。

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