〈集団の攻防の動き〉

一般に、集団戦術はチーム戦術とグループ戦術に区分される。我々はこれまで、グループ戦術の「基本コンビネーション」は、集団の動きの形成にとって欠かせないものと考えてきた。ドイツでは、「基本コンビネーション2対2」は、「攻防の情況を解決するために、二人の選手が行なう共同作業」であり、「連携プレーにおける準備と終決の行為は、いくつかの基本コンビネーションのつながり」であるとしている。そして攻撃では、「自分のポジションでフリーに走る」、「別のポジションにフリーに走る」、「ポジションチェンジ」、「ブロック」の4類型が示されている。それに対し、防御では、「マンツーマン」、「マークチェンジ」の2類型が示されている。一方、ハンガリーでは、とりわけ防御のグループ戦術として、「つめる—ボールに寄る—戻る」、「引き継ぎ—ガード—引き渡し」、「スライド—そのまま—チェンジ」の3類型が示され、旧東ドイツ同様、2対2の基本的な戦術の動きの形態として特筆できる 。いずれのとらえ方も移動の動きに力点が置かれて対象化されているのが分かる。

次の図は、3つの場面に観察された集団の攻防の動きの形態を表そうとしたものである(連続図7〜9)。

〈場面① 集団のセット防御の動き(図7❶〜❹)〉

O選手(左45度)とK選手(トップ)は、2対2を意識し、敵方エースに二人の間を突破されまいとする感覚を張り巡らして位置どった。全体としてもボールに密集することにした。敵方2番(左サイド)はきっかけの切り返しからポストのポジションにフリーに走ってきた(❶)。O選手が、敵方左利きエース10番の継続のための合わせの動きにタイミングよくつめた瞬間、二人の間に運動感覚としての幅と厚みができた(❷)。O選手は、10番をそのまま方向づけ、K選手は2番をM選手(センター)に引き渡し、O選手の動きに共感しながら、時間のずれを少し作ってフォローした。10番は挟まれた体勢から無理なスローを強いられ、ボールをもらった敵方五番(センター)は、I選手(右45度)によって意図的に空けられたスペースを走らされ(❸)、ミスを誘われた(❹)。「罠にはめた」のである。 

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