とりわけ当日に向けて、ディフェンスを重点的に工夫することに時間を裂いた。まずセットでは、3—2—1(ハイポジション)のシステムの中で、10番の選手に対してシュートを打てない状態を作り、無理なパスからミスを誘うことを構想した。そこで、O選手(左45度)とリードオフマンのK選手(トップ)には、2対2の情況でこのエースを意図的に挟むことを課題にしたが、徹底的に二人で喋りながらビデオを観察させた。これまで、K選手にはゲームコントロールを完全に任せたこともあった。また戻りでも、10番の選手には必ず誰かがマークチェックし、速攻を潰すことを構想した。その際、情況に応じて誰が誰をマークしやすいかを全員に考えさせた。

キャプテンでもあるK選手が、「もっとビデオを観ていてもいいか」と聞いてきたので、「動きをよく観て、間合いをつめるタイミングの感じをつかむことが肝心だ」とだけ指示した。ディフェンスについて確認されたことは、「10番の選手に対してはイン(内側)に方向づけて二人で挟む(マンツーマンもあり)」「2番(左サイド)の飛び出しに、上三人の誰かがつく」とまとめていた(「部誌」)。   

特殊ゲーム構想は、実際のゲーム中に変更することもありうる。そのために、「予測されなかった諸条件に応じられるように、“融通性”」ⅹⅹⅴ をもっていなければならない。また、構想全体の総括的な評価は、ゲーム終了後に行なわれる。ここでは、タイミングの問題への関与は特筆できるエピソードである。また、筆者の観察と記述は、敵方チームのオフェンスシステムの特徴的な動きをデフォルメしてとらえており、今回も非常に役に立っていたと思われる。

次のページ