ここで、各局面は、どこかの局面を省略して経過することが想定できる。たとえば、1対1のフェイントを使って敵を抜いた場合は、「きっかけ」からすぐに「突破」にいたったことになる。また「速攻」の諸局面は、「セット」と同じ構造をもつ。一方「防御」では、「攻撃」と反対のことをしようとする。とりわけ、「セット」の「防御」の「ポジションにつく」ことは、ディフェンスシステムだけでなく、走り方まで決定することになるので、非常に重要である。また、「切り換え局面」では、「セット」の「攻撃」から「戻り」、「セット」の「防御」から「速攻」の場合に、それぞれの局面の一部が融合し、攻防表裏一体となる。  以上のことを踏まえ、ゲームの流れの有意味な分節に着目して、「ディフェンスの勝利」を象徴しているゲーム局面を含んだ典型的な場面をビデオから抽出してみよう。

〈場面① 3—2—1ディフェンスからの速攻〉

O選手(左45度)は高く位置どり、リードオフマンのK選手(トップ)は少し低く位置どって、ディフェンスの厚みを作った。二人は、チーム戦術としての敵方左利きエース10番(右四五度)の継続プレーを、コンビネーションプレーでつめて挟みながら、得意な方向にパスを限定させた。K選手が10番に寄ったことにより生まれたスペースで、敵方の5番(センター)はボールをキャッチしたが、そのスペースをさらに空けるために引いて位置どっていたI選手(右45度)の防御によって走らされ、チャージングのファールを取られた。味方チームは敵方のミスから攻撃へ切り換え、反撃速攻に成功した。

このように成功した場面が多かったとはいえ、ポジションの役割を徹底させることにより、「何をあせっていたのかわからない程、私はオフェンスで余裕がありませんでした。ディフェンスのことばっかり頭にあって思うように攻めれず、くやしいです」(O選手「部誌」)という記述にあるように、ある意味では犠牲も強いられた。 またその他の場面では、「10番のロングシュートは守っていたが、5番や7番(左45度)へふられたときに守りきれなかった」(全員の反省「部誌」)こともあった。

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