〈場面② 戻りのマンツーマンディフェンスからの速攻〉

味方チームのミスによる敵方の反撃速攻に対応して、M選手(センター)、O選手(左45度)、I選手(右45度)の三人はチーム戦術としてのマンツーマンを意図して、自陣に逸速く戻って敵方をマークしていた。O選手は中盤での継続を阻止するために、敵方左利きエース10番の利き腕につめてパスを手に当てた。そこに素早く戻ってきたリードオフマンのK選手(トップ)は、ルーズボールを獲得し、反撃に転じたO選手にパスを出して速攻に成功した。しかし、その他の場面では、「相手の二番(左サイド)にもけっこう走られていて、ムダな点数を献上してしまった」(O選手「部誌」)。

〈場面③ 変則5—1ディフェンスからの速攻〉

ゲームの流れを読みながら、監督がシステムの変更を伝えた。とりわけK選手(トップ)は、最初から高く位置どって、敵方左利きエース10番(左45度)が、有利な方向でボールをもらえないように徹底して守ることによって、敵方チームのボール回しを限定した。敵方の七番(左45度)は、スペースを空けるために引いて守っていたI選手(右45度)の防御によって、無理に走らされてオーバーステップのファールを取られ、味方チームは反撃速攻に成功した。  速攻との関連で、ディフェンスの強化は大切である。とりわけ場面①のように、セットディフェンスでは、選手たちがフリースローラインのどこにどのように位置どるかは非常に重要である。なぜならば一般に、フリースローライン付近は、ロングシュートを打つことができるゾーンを意味しているからである。したがって、敵方チームのシュートや突破力に応じて、多様なディフェンスラインを生む。10番に対して、このラインを高くしたことはいうまでもない。また、ディフェンスが一方に寄ると、他方でスペースができてしまうが、危険を承知でどこかを捨てたり、意図的に穴をつくるという発想も必要となる。また、場面②のように、中盤を意図的に防御する仕方は、我が国ではあまり開発されていない。戻りのディフェンスで、敵方を自由にさせないことは、敵方の速攻の走り方の変形を強いるという点で、非常に意味がある。速攻では、ボールを自由に運べるという一般的な認識を覆すことになるからである。

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