- ⑶、味方との情況の意味分析の問題は、あるゲーム情況に際し、個人や集団でやろうとすることが瞬時に皆に共有できるかどうかということである。それが共有できないと、チームの随所にずれが生じ、リズムが狂う。それゆえ試合前の練習やゲーム構想の段階から、いわゆるチームの「共通の基盤」となる基本的な戦術の動きかたとその変形の仕方を徹底して確認する中で、それぞれの運動感覚を「我々の運動感覚」にまで高めておくことは重要である。そうすることで、一人一人が当のゲーム情況や指導者の指示に対応するのが速く、しかも正確になる。また、ある選手の判断や動きにも容易に共感でき、集団の力動を形成しやすくする。しかしこのことは個性を潰すことではない。選手がその意味を正しく理解すれば、かえってチームの中で個性を自覚することになるのである。我々が動ける状態をつくっておくと、我々は応じられるということであろうか。集団の主体性とは何かということについては、今後さらに厳密に明らかにしていく必要があろう。
- ⑷、選手のリードオフマンに求められる運動感覚能力とは、指導者と同等か、それ以上のゲーム感覚能力である。そして指導者の代わりに、この能力と自分の力動性に基づいて、味方の一人一人と呼吸を合わせながら、チーム全体を引っ張っていく必要がある。さらに敵方との対応関係では、応じるだけでは事を起こすことはできない。どうしても応じさせるといった能力が要求されるのである。また、球技の世界では、「チームの頭脳は一つでよい」といわれることがある。チームの動きをまとめあげるためにはこの考え方は欠かせまい。とりわけゲーム情況にあって、リードオフマンと指導者との即座のやりとりでは、運動感覚レベルでの「あうん」(阿吽の呼吸) が最も必要とされるところである。
次のページ