〈場面② 防御の戦術に力点を置いた動き〉

K選手(トップ)は、ボールを持たない敵方左利きエース10番(右45度)が、ボールを迎えにいこうとしてプレーアブルにならないように、体の正面を敵方に向けながら守っている。その際K選手は、背中でボールやその他の選手の気配を感じ取りながら、ピボットを交えたサイドステップとクロスステップを可変的に組合せて阻止することに成功している。

両場面で観察できるような攻撃に応じた防御の動きを、戦術に力点を置いた動きの形態と呼んできた。しかしその中に我々は、たとえば間合いをとるとか、気配を感じ取るといった、本来のカンとしての個人戦術を感得しているのである。それと同時に我々は、今ここで対峙している選手の動きの形態やその組合せの中に、どのような対応動作が欠けているのか、さらにどのような情況での運動経験が足りないのかも見抜いている。この場合我々は、とりわけ当の選手がやろうとしてできていない動きかたやその組合せかたについては、その情況で実現可能な運動表象の全体図式として、運動投企を選手に代わって心的に先取りしていることもある。それは、自分の運動経験に照らして、選手の動きに共感しながら、私の動く感じを観察しているからに外ならない。

以上我々は、例証について、主体的ゲーム分析を十分行なえたとはいえないが、共同的に、生き生きしたゲーム情況の意味構造を多少なりとも明瞭にできたと思われる。 

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