5 結語

さて本論では、ゲーム情況の意味構造を、ゲーム構想、ゲームの流れ、ゲーム局面、そして集団と個人の攻防の動きから把握してきたが、ここでは集団と個人の攻防の動きをとらえる視点をさらに設けていく可能性を示唆できる。この場合、蓬郷の次の考え方は示唆に富む。すなわち、ゲームを観察する際には、運動感覚的な構造をもった動きの攻防と、シンボル的な構造をもったシステムの攻防の、相互に基づけの関係にある2つの理論を明らかにすることができるという。そして両者は、どちらも私の動く感じが基礎構造にあるとして、6つの観察カテゴリーを示しているⅹⅹⅹⅳ 。この考え方を参考にした上で、これまでの例証分析に基づいて、本来はシステムとはいえない集団と個人の攻防の動きの本質的な特徴をとらえる視点として、次のような観察カテゴリーを挙げてみたい。

集団の攻防の動きについては、まず集団の中で個々が連係する動きの形態が存在し、これはゲーム局面に示された準備、展開、終決における諸課題にしたがって、我々の動く感じとして分節化されうる。そこでは、集団の動きが調和したり変形する感覚や、チームのリズムといった集団の動きの力動性が見出せる。また、とりわけ防御については動きの積極性と密集性が確認できた。

個人の攻防の動きについては、まずもって動きの組合せかたの多様性と可変性、そして他者の運動の先取りを挙げることができる。そこでは「間合い」と「ずれ」、そして「リズム」が観察できた。とりわけ防御では、二人以上のコンビネーションが各人の運動感覚の幅と厚みによって形成されることを確認した。またボールを持たない攻撃の動きとして、敵から逃れ、自由自在になろうとする感覚、すなわちプレーアブルの感覚を挙げることができよう。それぞれのカテゴリーを厳密に規定することは今後の課題となろう。

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