〈個人の攻防の動き〉

実際の攻撃では、選手がボールを持たない時間がほとんどである。この理由から、スカンジナビア諸国に代表されるように、ボールを持たない選手の戦術上の意図と手段の考え方が衆目を集めている。まず、ボールを持たない者がフリーに走ろうとする意図に対して、「プレーアブル(プレーできる状態)である」(being playable)、「プレーアブルになる」(becoming playable)、「プレーアブルにさせる」(making teammate playable)ことが示されている。そして、「プレーアブル」の最も重要な手段として、「フリーに走る」ことが挙げられている。この用語は、プレーを継続するために、有利な位置に走って移動することを意味しており、「基本コンビネーション2対2」との密接な関連性を浮き彫りにしている(合わせの動き等) 。球技論でも、「フリーに走る」ことは、①敵方の防御から逃れる、②味方にパスをもらいにいく、③敵陣への進撃もしくは侵入のためのスペースを味方が自由に使えるようにする、といった目標設定の下で生じる。この場合、たえず起こりうるプレーの継続が先取りされていなければならないという 。ボールを持たない個人戦術のとらえ方は、移動の動きに力点が置かれて対象化されているのが分かる。一方防御では、敵方をプレーアブルにさせないようにする動きが重要となる。

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