実戦ハンドボールQ&A
ディフェンスが気になるというのは、シュートを打とうとするとき前につめられたり、手を上げられて打つ角度をせばめられたり、またカットに来るのじゃないかと気になったりしてゴールキーパーの動きを見ることができなかったり、どうしたらよいのかと思い切ったスイングができないことだと思われます。こういうことは初歩的な段階ではありがちなことです。たとえばつぎのようになります。
①ディフェンスは下がっているし、走り込む間合いもある。ゴールやゴールポストあるいはディフェンスなど全体の動きもよく見えているし、シュートを打とうと決心する(写真Ⅰ)。
②ところが、パスをもらってシュートを打とうとすると、ディフェンスにいつのまにかつめられていて、今までゴールやゴールキーパー、ディフェンスの動きなどよく見えたのに、ディフェンスばかりが大きく見えて何も見えないばかりかシュートも間合いがないので大変打ちにくい(写真Ⅱ)。
このように初歩的な段階では、先々のことが予測できないためにとまどってしまうのです。ところが、熟練してくると、自分がシュートを打ちに行くことによってどのように場面が変わっていくかが前もってわかっているので、ディフェンスをはずして打ったり、ディフェンスにかくれて打ったりで、ディフェンスが気にならないばかりかディフェンスを利用してシュートするようにまでなります。
ノーマークでのシュートができるようになれば、ディフェンスをつけてシュートする練習を行います。気にならなくなるためにはディフェンスに対応する仕方を覚える以外に手はありません。次にシュート時のディフェンスに対する対応の仕方をあげてみます。
ディフェンスはシュートに対してつめるのが徹則です。つめられないでシュートを打つことは難しいのですが、キャッチと同時にノーステップのシュートをしたり、ディフェンスの正面に切り込まないで、ディフェンスのちょっとした隙に正面からずれておき、切り込んでシュートするのも一方法です(他の項四〇頁参照)。
①フットワークによって。シュートを打とうとする最後の一、二歩によって方向変換して体をはずしてシュートする。
②体を変化させることによって。シュートを打つ瞬間に体を横倒しにすることによってディフェンスをはずすことができる(写真Ⅳ)。
③バックスイングによって。たとえば、オーバースローのバックスイングからサイドスローに切り換える(写真Ⅴ)。
またアンダースローのバックスイングをして下を打つぞというフェイクをしてオーバースローに切り換える(写真Ⅵ)などは、バックスイングによってボールを離すポイントとは違ったところにディフェンスの注目を集めてシュートする方法です。
この技術は目のつけ所が大切で、腕は下を打つバックスイングをしていても目は上から打つ位置で見ていてはフェイクにはなりません。目も下からキーパーをのぞいて下から打つぞという具合にしてディフェンスの注意をすべて下方に集め、上にはずして打ちます。
ゴールキーパーはボールが飛んで来てからボールをとるわけではなく、手から離れる前にはどこにボールが飛んで来るか判断して動かなければ間に合いません。シューターの動作がディフェンスに隠れてしまっては、どこにボールが飛んで来るかわからないのです。このためシューターは、ディフェンスをかわして打つばかりでなく、自分のモーションをディフェンスの陰に隠してシュートする技術も大切なのです。
ディフェンスを抜く技術は、フェイントのところで述べてありますので省略します。(108頁参照)
以上のように、ディフェンスを気にせずに打つためにはいろんなことを覚えなければなりません。またディフェンスの状況によっていろんな技術を使いこなさなければなりません。ある瞬間にはロングシュー小を打つのにちょうどよい間合いであっても次の瞬間にはロングシュートを打つよりパスをした方がよいときがあるのです。ある瞬間にシュートを打つのだと決めてしまわないで、切り込みながらシュートを打つべきか、パスすべきか、フェイントすべきかの判断ができなくてはなりません。シュートの技術ばかりうまくなっても、その技術を生かす能力を養わなくてはなんにもなりません。そのためには、まずパスか、シュートか、フェイントかの状況判断ができるようになることです。そこではじめてディフェンスを気にしなくてもシュートできるようになるのです。
(大西)