ウオーミングアップ,クールダウンを充実させること,選手に傷害に対する考え方の啓蒙を行うことも大切である。


Column

ハンドボールとスポーツ医学

「◯◯が膝を手術してね,半月板だよ」とか,「先生,昨日の練習で膝を捻ってしまいました。靭帯を伸ばしたみたいです」などという会話が,コーチ・選手の間でも頻繁にされるようになってきていますが,半月板や靭帯とは実際どんなものなのでしょうか。 

下の左の図は,膝の前・外方から跳めた解剖図です。半月板は,大腿骨と脛骨の間でクッションの役目を果たしている線維軟骨で,靭帯は骨と骨の安定性を維持するものであり,膝に関しては前十字靭帯,後十字執帯,外側測副靭帯,内側側副靭帯の4つが有名です。 

右の図は,膝の外側から衝撃を受けた場合の靭帯の損傷の模式図です。外側側副靱帯が伸び,前十字執帯と内側側副靭帯が切れている状態です。ここまで損傷がひどいと競技復帰のためには手術が必要になります。靱帯修復には,人工靭帯を取りつける方法と,自分の他の靭帯で補修する方法があります。自分の他の靭帯というのは,身体のなかであまり使われていない大腿外側にある腸脛靭帯をよく使います。大腿に大きな傷が残るため,女性においては人工靭帯が多く使われる傾向にあります。入院期間は1週間前後で,完全競技復帰までは1年を要しますが,機能しなくなった執帯は退化するため,痛みがなくなっても膝の不安定にかわりはなく,激しいスポーツの最中にまたけがをしてしまう結果となります。

178z

現役復帰のためには手術せざるをえないかもしれません。半月板損傷は軟骨が欠けたりちぎれたりするもので,その部分が関節内にはまり込みロッキングが生じます。治療は靭帯修復とは異なり,関節鏡とよばれる胃カメラ様の器具を膝関節にいれて,それを視ながら半月板を切除します。通常3日の入院,4週間ぐらいで競技復帰が可能です。 

リハビリについては,いろいろな器具が開発されて病院でメニューを組んで行われていますが,選手自身が最もお世話になるのが補装具,いわゆるサポーターと呼ばれるものです。サポーターにはふだんつけている伸縮性のゴム状のものから,手術後につける金具の入った頑丈なものまでと多種多様です。 

ともあれ,指導者にとって大切なことは,けがをしないような環境づくりに努めることと,けがをしてしまったら放置させずにすぐにスポーツドクターに診せること,すぐに診てもらえるスポーツドクターを確保しておくことの3点です。日頃から,練習場の環境整備と選手のコンディションづくりに気を配り,救急処置法を身につけ,現場サイドから無理の言えるスポーツドクターと仲良くなっておくこと,これが勝つために必要なスポーツ医学の第1歩です。

健康管理目次へ 次ページへ