3.応急処置に必要な基本書項 

傷害は,どんなに注意を払っていても起きうるものである。万が一傷害が起きてしまった場合,指導者としては,「最も少ない損失で,できるだけ早く回復させる」ようにしなければならない。そのために応急処置は大切であり,指導者は応急処置方法を訓練しておかなくてはならない。また,心肺蘇生術についてもー応の知識と技術を知っておく必要がある。

≪RICE≫

 ハンドボール外傷の応急処置で最も頻繁に用いられる方法が,安静を保ち使わない(Rest),氷で冷やす(Ice),圧迫する(Compression),高く上げる(Elevation)である。 

Rest:どのような外傷の場合でも安静を保ち,負傷部位を動かさないことが応急処置の原則である。安静を保たない場合は痛みなどの症状ばかりではなく,負傷部位の症状が悪化し,結局は十分なプレーができなくなったり復帰が遅れたりすることになる。脳震とう,捻挫,肉離れ,打撲,切り傷など,すべての場合に安静を保つことは有効である。

Ice:負傷部位を冷やすことにより,内出血を抑え,腫れを最小限に防ぐことができ,治癒を早め ることができる。負傷直後に冷やすことが大切であり,時間がたてばたつほど効果は減少する。冷やすには氷を最大限に利用し,負傷の部位によってはその方法を工夫する。

例えば,突き指などの上肢や,捻挫などの下肢の場合はバケツに氷水を作り,手や足を入れてしまう。大腿部などの肉離れであれば,氷をビニール袋に入れタオルなどでくるんで当てる方法などがよい。冷やす時間は15〜30分が目安となる。氷は応急処置には不可欠のものであるから,冷蔵庫などを利用して常に用意しておくべきである。 

Compression:捻挫などの場合に,負傷部位の内出血や腫れを防ぐために,圧迫することも有効な処置である。ただし,圧迫しすぎると循環障害を起こすので,実施に当たっては十分な注意が必要である。

Elevation:負傷部位の腫れを未然に防いだり,早くひかせるために,負傷部位を心臓より高く上げることが重要である。

≪創傷の処置≫ 

ハンドボールは室内競技であり,大会はほとんど体育館で行われているが,ふだんの練習はほとんど屋外で行われている。そのため,擦過創(すりきず),挫創(皮膚がつぶれたもの),割創(皮膚が割れたようになっているもの)などの傷がよくみられる。これらの傷は頻度も高く,その正しい処置を覚えておく必要がある。重要なことは,傷の保護と感染の防止で,原則は次の3点である。

①砂などの異物を水道の流水で十分に洗い落とす。

②出血を止める。清潔なガーゼなどを傷の部分に当てて3分ぐらい圧迫する。ほとんどの傷は圧迫によって止血できる。しかし,頭部などは血管に富んでおり止血しにくいこともある。止血できない場合は,見かけより出血量は多くないことが多いので,あわてることなく医療機関で 受診させる。  

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