初級・中級レベルの競技者においては,最大筋力は競技力に影響があることが認められている。
ハンドボールの技術は多関節運動であるため,これと最大筋力のトレーニングを関連づけて考える場合,その技術に重い重量負荷を加え,最大筋力を向上させることは困難でありかつ危険である。この場合,むしろ技術やこれに密接に関連している無気的パワーや無気的持久力の前提条件として,−般的な形態での筋力トレーニングを,身体全体にわたりバランスよく高めておくことが効果的であろう。
無気的パワーは,最大下の負荷に対してより早いスピードで運動を実行する能力である。無気的パワーは,次の2つに分けて考えることができる。
無気的パワーは,力とスピードの積で表せるが,相手と同じ力であるなら,よりスピードの早いほうが有利であり,また,同じスピードであるならより力強いほうが有利となるのは当然のことである。ハンドボールの技術は,この無気的パワーと密接に関係があり,ハンドボールにおける走・跳・投の技術は,無気的パワーの発揮によって決定づけられる。
したがって,ハンドボールの技術は無気的なパワーと関連させて,①より力強く行う場合(力型の無気的パワー),あるいは,②よりスピーディーに行う場合(スピード型の無気的パワー)を考慮にいれて強化していくことが重要となる。ゲームで行われる1つ1つの技術が相手より「力強い」ものであったり,あるいは「スピード豊か」であるように,技術を専門的にトレーニングしておくことが重要である。
無気的パワーの専門的なトレーニングは,ハンドボールの走・跳・投に分け,具体的な技術やその技術に近いトレーニング形態で負荷をかけることである。
持久力は,ある運動水準の持続力をしめし,無気的な持久力と有気的な持久力に分けて考えられている。無気的な持久力は,無気的パワーの維持能力として理解することができる。これに対し,有気的持久力は有酸素的な運動負荷のため,運動水準は高くないが,その持続性は無気的持久力より長くなる。
ハンドボールの技術と関連づけると,無気的パワーが常に高いレベルにあり,ゲームを通して無気的パワーが維持され続けなければならない。
例えば,ゲームの最初で速攻のための素早いダッシュや爆発的なジャンプシュートが行えても,これがゲーム終了まで維持される必要がある。この無気的持久力は,無気的パワーと同様に,ハンドボールの技術・戦術にとって欠くことのできない重要な体力要素であることを見逃してはならない。したがって,ハンドボールのトレーニングは,無気的パワーをつねに高く,しかも高いレベルで維持されるように複合的にトレーニングされる必要がある。
このように,技術の1つ1つの「力強さ」や「スピードの維持能力としての無気的持久力は重要であるが,ハンドボールのゲームで,前・後半を通して60分間走り続けることができるためには,有気的な持久力もゲームの形態の中で専門的にトレーニングする必要がある。
調整力は,身体の運動をコントロールし,エネルギーを効果的に出したり,使ったりする能力の