②ハンドボール・プレーヤーのための体力は,複合的な形態でトレーニングされるべきである。 複合的なトレーニング形態とは,ボールを用いたり,ゲームでの動きに密接なトレーニングである。

2 体力トレーニングの原則

1.一般的原則

(1)オーバーロードの原則 

体力トレーニングは,一般に身体に運動負荷を加えることによって行われる。身体運動以外に体力を向上させる方法はない。薬や食事による栄養摂取は,身体運動の効果を助ける役割は果たせても,それ自体で体力トレーニングの手段とはなり得ない。しかし,どんな身体運動でもやりさえすれば体力が向上するというものではない。形だけのトレーニングを実施するのではなく,ある一定のレベル以上の負荷の量や質が要求される。これが,“オーバーロードの原則”であり,日本語では,過(重)負荷の原則という。もちろんその内容は一律的なものではなく,トレーニングのねらいやトレーニングの対象によっては,質的にも,量的にも変わるものである。換言すれば,オーバーロードの条件のコントロールが,望ましいトレーニングの成果を得る処方であるといえる。ここでいう運動負荷の量と質は,以下の3つの条件で規定される。

この3つの条件のいずれも,ある一定のレベルに達していなければそのトレーニング効果を期待することはできない。どんなに強度のある強いトレーニングをしても,時間が短かったり,またはその運動を実施する間隔が長すぎたりすると,それは意味のないトレーニングとなってしまう。同様に,たとえ毎日トレーニングしても,強度と時間の条件が整っていなければやはり同じことになる。

(2)運動負荷の質的(強度)の原則 

へツティンガ一によれば,筋力トレーニングのオーバーロードとしては,最大筋力の40%以上の負荷としているが,40%以上の負荷では,常に同一のトレーニング効果を獲得するかといえば,決してそうではない。最大筋力に対する何%レベルでそのトレーニングを行うかによって効果は異なってくる。 

このようにトレーニング効果は,それが同じパターンのトレーニングであっても,負荷とされる水準によって異なってくる。すなわち,トレーニングの効果は,トレーニング負荷の質によって大きく左右されるものである。 

トレーニング処方では,トレーニング刺激の質は強さの条件として扱われている。今回の目的の体力要素という点で,その強さの条件のいくつかについて考えてみよう。 

筋力・筋持久力のトレーニングの場合,最大筋力の何%というかたちで処方する。松井らの研究によれば,そのトレーニング効果との関係は図のようになる。重量等負荷がほぼ一定している運動負荷の場合には,その運動の繰り返し回数を運動の強さの処方基準としうる場合もある。 

全身持久力の強さの処方基準となるのは,多くの場合最大酸素摂取量であり,その何%ぐらいの酸素摂取量を必要とする運動を行うかで処方する。しかし,実際のトレーニングの場ではその関連値として心拍数を用いることが多い。すなわち,対象の運動の最大心拍数を指標とし,その何%ぐ

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