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3 チーム攻撃戦術 

 攻撃には,チームの基本攻撃システムとして防御形態を崩すべく実施する戦術と,試合ごとに相手の防御システムを研究して,その弱点を積極的に狙う作戦がある。練習段階では様々な防御形態を想定して戦術練習が行われ,対戦チームの状況に応じて作戦が立案され実行される。

♦防御システムと攻撃

 攻撃戦術は,ー般的には防御システムに対応して以下のように変化する。97-2

♦歴史は語る

 攻撃戦術は,過去の試合を分析することで浮かび上がらせることができる。以下は過去10年間の、男子の世界大会における防御システムの傾向と,攻撃の主な戦術を対比させたものである。1982年の世界選手権大会では,特にサイドからのシュート技術が向上した大会といえる。サイドシュートの確率が高まるとともに,チームの得点に占めるサイドシュートの割合が多くなった。97-1

 1984年のロサンゼルスオリンピックでは,サイドシュートを阻止するため,サイドプレスディフェンスが行われた。そのためか,ロングシュートによる得点の比率が多くなった。この時すでに,全日本チームは形態的なハンデを克服するため,ユーゴの3−2−1ディフェンスを取り入れてオリンピックに臨んだ。1986年の世界選手権大会では,それまでユーゴが採用していた3−2−1ディフェンスの評価が高まり,採用するチームが急増したム1988年のソウルオリンピックでは,ソ連(旧)はユーゴや韓国の3−2−1ディフェンスに対して,バウンドパスなどを駆使してゴールエリアライン付近を攻撃し成功した。また,ソ連(旧)は韓国やユーゴのロングシュートを阻止するため,トップディフェンスが片寄った位置で防御する,変則の5−1システムで対応して成功した。

 以上のように,過去の試合を観察すると作戦が浮かび上がってくる。指導者は,ただ単に試合の結果に一喜一憂するのでなく,どのような攻撃に対しどのような防御がなされたかに着目し,分析する態度を身につけるべきである。

1.速攻

[ポジション別個々の役割を明確にする]

解説

〈敵のシュート時の状況判断〉

 速攻は,一瞬の判断力がその成否を左右する。シューターがディフェンスにプレスされ,不利な体勢からシュートしようとするときは,キーパー

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