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い。パス動作を早めるためには,2つの方法が考えられる。
1つは,体力強化により個々の局面の動作時間を短縮する方法であり,もう1つは,キャッチとパスの2つの動作の局面を省略・融合して動作時間を短縮する方法である。未熟練者は,捕球動作の3分節のあとに投球動作の3分節を行う。しかし,熟練者は,挿球動作の終末局面と投球動作の準備局面を融合し,1つの局面を省略する。
捕 球 投 球
熟練者・・・準備局面→主要局面→終末局面
→準鯖局面→主要局面→
第1局面 第2局面 第3局面 第4局面
未熟練者・・準備局面→主要局面→終末局面→準備局面→
熟練したプレーヤーは,それぞれの動きに時空的リズムを持っているものである。例えば,ジャンプシュートと跳躍前の助走幅は図1に示したように異なる。これは,跳躍のための瞬発力を最大限に発挿させるのに都合がよい。また,ディフェンスに跳躍位置の正確な予測を不可能にし,防御活動を困難にする。
このほか,すべてのハンドボール技術には人それぞれ特有のリズムがあり,熟練者のリズムには技能を発揮するための合理性がひそんでいる。音楽のリズムのように運動のリズムを捉えて(運動共感を利用して)指導すると,多大な効果が期待される。
熟練者(合理的)の運動の主要局面は,身体の各部位が同時に開始されるのではなく,少しずつ開始時期がずれる。しかも,その開始時期は一定で順序がある。
シュート動作の場合,まず体幹の腰が捻転し,次に肩,肘,手首へと伝わり,末端では加速される。
ところが初心者の場合,各部位の動きを同時に開始したり,その時期が逆転することもある。そのためボールは加速せず,シュート動作もぎこちなく見える。
図2は,熟練者がシュートしたときの身体部位の速度変化を示したものである。身体の中心部分から末端へと,最高速度の発現時期が順序よくずれている。これは,体幹の移動が末端ヘスムーズに伝えられ,加速されていることを物語っている。
もし動きにぎこちない印象を受けた場合,それはその動きに欠点があることを意味する。