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図3は,ジャンプシュート時のボールの軌跡を,熟練者と未熟練者で比較したものである。熟練者は,ジャンプ時にボールを上方に引き上げるので,前進とあいまってきれいな孤を描く。しかし,未熟練者のボールの動きはスムーズではない。
跳躍後地面に着地するときは,個々の関節部位を適度に緊張させ,衝撃を吸収するように安定している。ところが,関節部位に余分な緊張があるとその動作はぎこちなく,逆に極度に柔軟すぎると次の動作に対応できなくなる。
例えば,ランニングでバタバタと足音が聞こえるのは弾性の欠如であり,練習の課題となる。このように,運動の弾性は聴覚からの情報で判断できる場合が多い。
運動の先取りとは,ある運動を行おうとするとき,その運動を行いやすい準備動作が前もって生起することをいう。そして,その先取り動作から次の動作を予測して行動することも先取り動作という。
ゴールキーパーは,シューターの先取り動作からその次の動作を先取りし,シュートコースを予測する。そこでシューターは,シュート前にシュートコースと異なる方向にシュートすると思わせるように,嘘の情報をキーパーに与えることが大切である。
また,1対1の攻防場面で,ディフェンスはオフェンスの攻撃動作における先取り動作から,次の動作を予測し対応する。オフェンスはフェイントを行い,嘘の情報を見せることが攻撃成功の鍵となる。
運動技能が高まると,運動経過は時間的,空間的,力動的に定常性が生じる。そして,ついには目標達成にも定常性が定着する。つまり,熟練者はミスが少なくその精度も高い。
ハンドボールのシュートにおいても,狙った箇所へ正確にシュートできるかどうかは得点力に大きく左右する。特に,身体接触を伴いながらのシュート場面で,その能力が大いに比較される。
的当て実験の結果,最大投力の高い者は正確性も高いことがわかった。しかも最大投力の50%地点での正確性は,全員ほぼ同様であることもわかった。つまり,50m投げる者の25m地点での的当ての正確性は,30m投げる者の15m地点の正確性と同じである。したがって,同じ距離での正確性は,遠投力のあるもののほうが高いといえる。
同じサイズのコートでプレーする以上,ハンドボールで遠投力は重要な要素である。
運動の調和は,四肢や胴体など異なった箇所の運動の総合作用により判断される。運動の不調和を印象づけられるとき,その動作には欠点があることを意味し,練習の課題を考えさせてくれる。
以上の8つの徴表が合理的に行われて,初めて調和のとれた美しい動きとなる。