人間は,自分の生活経験がもとになり,いろいろな場面でそれを発揮するものと思いますが,指導を重ねていくうちに,良いプレーヤーや監督から学ぶことがとても多いことに気づきました。しかし,これが受け売りでは,選手を納得させることができず不安感を抱かせてしまいます。その結果,それまでの努力が水の泡になってしまうことが今までにもよくありました。他の良さを学ぶということは,選手を多角的に納得させることのできる理論を持ち,必ず自分のものにしてから伝達することが大切だと思います。また、私は素人だけに,他のプレーヤーがあたりまえのようにこなすプレーができない,でもしたい,そのために「なぜ」,「どうして」,「どのようにしたら」ということを常に考えていました。以上のことを現在の指導の基盤にしています。 

楽しく部活動に取り組ませるための工夫について触れてみたいと思いますが,中学生の時期には大別して次の二通りの段階があると思います。 

第1段階としては,ボールを扱いハンドボールを通して何の拘束もなく練習やゲームができることと,身近な良いプレーを見学させ,練習の場で「真似」をさせながら,ハンドボールを相対的に感じとらせること。つまり,ハンドボールを「好き」にさせながら,技術の向上や理論に対し意欲を持たせること。この練習形式は1年生に多く取り入れています。この段階をへていないと挫折する者が多いような気がします。 

第2段階としては,競技であるからには試合に勝つことです。あくまでも単なる結果だけではあるが,そこまでの努力を通し,目標達成のために次のようなことに取り組ませることです。「勝つ」ためには,体力,技術,知識,正確な状況判断,精神面,さらには,何の障害もなく安心して練習に取り組める環境など,いくつかの要素が必要になってくると思います。その要素は,ほとんどがふだんの練習の中から身につけることができると思いますが,選手自身の願望がなくては真のプレーヤーにはなれないと思います。私は,人間の持ついくつかの欲求をこの面に向けさせ,「結果の伴わない楽しさ」から,苦しいけれども「結果の伴う楽しさ」を求められる選手を育てることが大切だと思います。つまり,目標を選手1人ひとりが持ち,勝つための努力に対する楽しさ,そして,勝つ楽しさを持たせることだと思います。 

次に,練習の計画について触れたいと思います。1年生は楽しさだけを印象づけるような練習,2年生は3年生をまじえ,実戦的な練習を取り入れています。3年生は,2年生の秋から新チームに変わりますが,その時から基本的なパス,キャッチ,2対1、3対3の攻防を行い,主としてディフェンスのコンビ練習を冬期練習として取り組ませています。学校での練習は,主に約束練習を中心に1人ひとりの役割の確認をしています。そして,練習試合などで実戦に適した動作に切り替えながら,応用力を身につけさせるようにしています。

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