て技能と体力は向上する。精神的特徴として,激しい反抗や批判となったり,あるいは,おだやかな過程となるかの相違はあるものの,親から精神的に独立する。
 青年の反抗あるいは葛藤という現象は,親の青年に対する愛情と理解が深い場合や,親に対して信頼と尊敬が結びあう場合には目だたずにおだやかである。健全な親子関係が成立しているならば,質的変化をともなって信頼関係は回復する。親に対する青年の要求は,大部分は教師や指導者に対する要求と同種のものである。青年期に良い指導者に巡り会えたものは幸福である。指導者から技術を学び,人生を知り,社会へ目を開く絶好の機会である。指導者に対して人格的感化を望んでいる時期であり,指導者の責務は重大である。
 筋力トレーニングの効果は20歳から30歳が最も大きく,トレーニングは,男性ホルモンの分泌が急速に高まる第2次性徴期以降に開始するのが効果的であろう。同様に,有酸素運動能力のトレーニングも第2次性徴期以降が効果的である。この時期は,単純な繰り返す運動に耐えられる時期でもある。単調な動作の連続は苦痛であるが,運動の合理化が促進され,無駄のない経済的な技能の習得を可能にする。 以上のように,指導者は指導対象者の発育・発達段階によって,技術の理解,認識,致達度が異なることを銘記し,発育・発達の相違,個人差に留意した指導計画の立案が求められる。

3 子どものスポーツと指導

1)いろいろなスポーツ

38p 小学生,中学生のスポーツを考える場合,遊びとしてのスポーツ,教育としてのスポーツ,競技としてのスポーツとに分けて考える必要がある。子どもの文化としてのスポーツを考えるのであれば,競争,共同を通した仲間作り,ルールによるプレーの機会均等,努力と達成の喜びを重視するとらえ方がふさわしい。ルールやマナーを大切に考えていこうとする中で技術を学び,技能として定着させていきながら,社会生活の基盤を学んでいくのである。体育としてのスポーツ(運動)は,一般的には「楽しい体育」と言われるスローガンで表現されている。「楽しい体育」とは,スポーツの楽しさを求め,楽しくスポーツの学習が進むように組織される。正確には,それぞれのスポーツに備わっている,行うものにとっての意味や価値の学習を重視し,それを中心に授業を組織し,実施する体育のことである。子どもたちが競技としてのスポーツに求めているのは,自己の個性や能力が自由に表現でき,良くも悪くも自己実現を正当に評価してもらえる点であり,勝利と技能の向上を目指して,誰のためではなく,また,誰かにいわれてするのではなく,自らの意志で日々の努力を課しているのである。子どもたちがスポーツ

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