いえるが,他人を批判する能力も高まる。自発的な協力態度をとることができるので,グループを中心に自主的活動をとらせることが,将来への愛好的態度の形成へと発展する。 神経系の発達が著しく,技術の習得を短時間で獲得しやすいなど,器用さが増してくる。動く物体に対する視力である動体視力や,ボールの重さを判別する重量弁別能は,10歳ごろまでに顕著な発達を示す。正確にタイミングをあわせたり,高所から着地する際に衝撃を緩衝する能力も向上する。しかし,この時期に獲得された技能が,10歳以降の骨格筋の発達によって部分的な小器用さで終わらせないように,修正させていく指導の継続が求められる。

4)小学校高学年期

 小学校高学年になると,第2次性徴が出現する時期であり,形態的発育・成長はめざましいものがある。からだの発育・成長にともなって,運動能力の発達も著しい。自分の感情を抑えることができるようになり,社会的,道徳的なことがらに対して不正を嫌う傾向がある。競技規則に本物指向があり,国際ルールでないとゲームをしたくないという時期である。グループの結束力が強まり,リーダーを中心に協力しながら,運動を自分たちで工夫することができる。 中学年期にも増して,多くの技術の習得が可能になる。その際の重要な運動能力の課題としては,運動の前後の系列的順序を見越す能力を養うことである。この能力は9歳ぐらいから可能となり,多くの運動の基本となる協応運動を可能にさせる重要な役割を担う。小学校高学年の運動能力が飛躍的な発達をとげるのは,できごとの順序を見越す能力の発達があるからである。 小学校期の持久走能力は,トレーニングによる有酸素能力の増大はほとんどみられないといわれているので,このトレーニングは,走効率の改善である技能の向上といえる。

5)中学校期

 中学校の3年間は情緒的発達が著しく,運動刺激に対して敏感に反応する時期である。身体的発育の効果が高いので,幅広い面からの刺激を与える必要がある。第2次性徴が進み,男女の性差が明確に見られ,心身の発育・発達が顕著になる。体力の向上が著しく,身長,体重,筋力は12歳から15歳にかけて,その1年間当たりの増加量は生涯で最大となり,バランスのとれた全身運動が必要な時期である。中学校期の顕著な特徴として,自我の発現,自我の確立,人生観の形成があげられる。反抗や批判という形をとるにしても,親から精神的に独立していく。友人関係は深い人格的結合を求める気持ちが強く,反面,失望の体験ももつ。体力,技能に個人差が広がる時期である。 身体各部の発育。発達は必ずしも平行して進むものではない。また,身体機能は相互に依存して発達する。思春期前は,トレーニングによる筋肥大や有酸素能力の増大は少ない。しかし,調整力の学習効果は高いので,集中的な筋収縮を発揮する能力や,技術を高めて筋力や持久力を高めることは可能であり,このことが,その後の筋力や持久力の発達を促進する。

6)高等学校期

 高等学校期は,心身ともに個々の発育・発達の差が顕著となり,個人差があることを心にとめておく必要がある。身体的発達は,筋力,スピード,持久性ともに著しく発達し,トレーニングによっ

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