携わる人すべてがマナー,スポーツマンシップをわきまえて行動することである。そして3つめは,指導者である限りは自分のチームのことだけではなく,ハンドボールが広く普及するように協会の役員なども引き受けて競技の発展につくしてほしい。

⑪ 勝負の楽しさ,厳しさを教えよう

「勝ちたい」という欲求は人間の基本的な欲求である。やる以上は勝ちたいし,勝てば楽しい。また,勝てば報いられその後の練習に一層の励みがつく。スポーツはこの「勝負」があるためにその魅力を有し,より高い教育や技術習得へと人間を向けさせるものである。「勝負」といえば,勝負至上主義とさげすみの眼を持ってながめる人もいるようであるが,勝負ほど人間の可能性をださせ,人間の総合的なものを対戦する相手との相互関係においてはっきりとわからしめるものはない。勝つのは,必ず勝つだけの理由があったから勝つのであって,偶然や運に支配されてのものではない。その意味において勝負は非常に厳しいし,また,教育の良い手段となり得るものである。

⑫ 厳しさと寛容さを持とう

 技術的なことも,人間的なことも,着実に一歩一歩成果を積み重ねていくためには,それなりの厳しさをもたなくては身についていくものではない。昨日できたことが今日できないとしても不思議なことではない。何ごとも確実に身につき習慣化するまでは何回も正しい行動を繰り返さなくてはならない。つらいときには易きに流れるというのが人間の常である。そういう時,厳しくてもあるべき方向へ導いてやるのが指導者である。大切なことは厳しくても,理解してくれるものである。妥協,妥協で低いレベルへ流れるようでは,けっきょくは得るものは少ないのである。とはいっても,厳しいばかりの指導者では選手もつらいものである。選手に「仏」を感じさせる場面も用意し,寛容さを示すことにより信頼感のある関係を結ぶことが大切である。

⑬ スポーツマンシップを育てよう

 スポーツの楽しみは相手がいるからこそである。一緒にプレーしてくれるチームメイト,そして相手チームがいてこそである。試合をする仲間だけではなく,練習を指導してくれる人,試合となれば競技会を運営してくれる役員,応援してくれる観衆,ありとあらゆる人が個人の楽しみを支えている。スポーツマンシップとは,自分1人では何もできないということを自覚したときに芽生えてくるものである。ともすれば勝負にこだわり,スポーツマンシップという最も大切なことを忘れがちである。常に相手あっての自分であることを自覚し,尊敬と愛情を持って接するスポーツマンシップの態度を育てていかなければならない。

⑭ 指導したいことは明確に伝えよう

 指導者の気持ちは黙っていても伝わるものではない。「以心伝心」という言葉があるが,若い人や子どもに,しかも次から次へと入れ替わる人に語らずして分かるはずがない。だからといって多言であることは不必要である。心に響かない多くの言葉より,心に響く一言のほうがいい。気持ちを伝える手段にも種々の方法があるが,やはり言葉はスポーツ指導場面では最も重宝な手段である。
どういう言葉でどういうタイミングで言えば最も心に響く言葉となるのであろうか。話術,ユーモアも必要である。しかし,単にたけているだけで

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