ある。1時間指導すれば確かに1時間分上手にしてやるのが専門家というものである。そのためには,やはり指導の体系を自分自身で持つことが必要である。

⑥ 指導能力を積極的に磨こう

 指導には,こうすれば絶対にうまくいくという公式はない。それは人間1人ひとり個性があり,すべての人に同じ公式が当てはまるということはないからである。ある範囲までは一般的な原則が通用するが,最終的には,個性に見合った個別の方式が適用されなければならない。指導者は変わらなくても,選手は年々入れ替わっていく。常々学習や研修を行って指導能力に磨きをかけておくことが必要である。指導能力を磨くためには,積極的にハンドボールに関する情報に接することが必要である。それにはゲームの見学,書籍やビデオなど情報も大事であるが,実績ある指導者に面識を得る機会を積極的にもったり,指導を見学させてもらうことなどは指導能力の向上に非常に役立つものである。

⑦ 口マンと情念をもって進もう

 指導者としての資質の1つとして,確固とした信念を持ち得るかという問題がある。信念はそのスポーツに対するロマンを抱くことによって生まれ出るものではないだろうか。ロマンとは,実現するのに限りない情熱と努力と信念が必要であり,容易には手に入らないものである。人のため,自分のため,そして社会のために,やる以上は壮大なロマンをもって進みたいものである。長年,指導に携わり,ロマンを追い求めてきた指導者には,にじみでる風格の中に信念というものが感じられるものである。

⑧ 教養を身につけよう

ハンドボールだけをやっていれば指導技術が向上するかといえば決してそうではない。視野の狭さはけっきょくは指導上における弊害を生むことになるであろう。ハンドボール人である前に,指導者は立派な人間的魅力に溢れた人であるべきである。趣味を生かし,教養を高めてハンドボールをより広い,そして高い立場から見られる指導者であってほしい。

⑨ 公認指導者資格を取ろう

 スポーツの指導については,従来,経験さえあれば誰でもできるものであった。しかし,指導の善し悪しがプレーヤーに与える影響は非常に大きく,指導者に必要な知識や技能が身についていなければ,効率が悪いばかりか弊害もみられる場合がある。スポーツの発展の基礎は指導者にあるとする認識はあるものの,育成に関しては遅れていた状況にある。指導者資格は,指導者として必要な知識・技能を身につけているという証明である。
 経験は大切である。しかしそれに閉じ込もることなく,経験を整理し,科学的な裏づけをもって指導することが義務づけられた時代になろうとしている。

⑩ ハンドボール競技を育てよう

 ハンドボールに携わる指導者であれば,ハンドボールの発展を願わない指導者はいないであろう。ハンドボール発展のためには3つのことが必要である。
 1つには,ハンドボールそのもの,すなわちゲームそのものが素晴らしい技術と戦術を持ったゲームに発展すること,2つめにはハンドボールに

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