2ハンドボールの特性

 各種のスポーツ,とりわけボールゲームの中で, 他にはみられないハンドボールの特徴や優れた価 値がなになのか,また,社会の変化に即応して改 変すべきものがなにかを明確にすることが,今後 の発展の1つの鍵となる。ここではハンドボール の特性を,(1)発生史,(2)競技性,(3)技術論,(4)体 力,(5)教育性の視点にたって述べてみたい。

①発生的特性

 前項で述べたようにハンドボール成立の特徴 は,19世紀末から20世紀初頭の中北部ヨーロッパ の社会的,歴史的状況に規定されたものであり, それは古代ギリシアに起源をもつ蹴球系ボールゲ —ム(フットボール)からの分化として,史上初 めて,手の集団ボールゲームとして誕生したとこ ろにある。また,発生地の地域的条件を反映して, 11人制アウトドア用と7人制インドア用に分かれ て発展したことがあげられる。  ここで重要なことは,発生史的にはサッカーから 派生しながらもそれが手で行われるために,運 動形態や身体,ボール操作の技術が独自に創出さ れる必要が生じたこと,また,インドアになるこ とによって人数,ルールなどの競技性にも工夫を 要することになったということであり,それを通 して初めてサッカーから自立しえたのである。

②競技特性

 ハンドボール競技を簡潔に表現するなら,次の ように言えるであろう。  「手の使用によるパスやドリブルによって,ひとりまたは数人で移動し,ディフェンスをかわし,6mの半円状の侵入制限エリアの外から, ゴールキーパーの守っているゴールに多くのシュートを投げ入れたチームが勝ちとなる。ボー ルの保持はひとり3秒まで,また移動できるの  は3歩までである。相手のボールをカットしたり,払い落とすことはできるが,相手の身体に影響を与えることは反則となり,特に危険な行為は禁じられている。」 さて,このような内容が他のボールゲームと比 較してどのような特徴となっているのか,次の表 にまとめてみた。

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 以上の点からみるとハンドボール競技は,攻守 混在型のパスゲームの範時に属し,ゴール目標 (ゴールキーパーが存在)型の特徴を有したものといえる。なお,ラグビー,サッカーやバスケットボールとの大きな違いの1つは,ステップの制限 と身体接触の許容範囲の問題であるが,これはボ ール操作の容易性と,身体操作の自由度によってその範囲が決められていると理解すべきであろう。

③技術特性

 ハンドボールの競技特性から必要となる技術には,以下の点がある。

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