1. 近年の各国の競技力 

            男子2005年〜2015年
            女子2005年〜2013年

  1)男子
  2)女子

2.過去から現在までの各国の競技力

            男子1938年〜2015年
            女子1957年〜2013年

1)各大陸のオリンピック、世界選手権大会出場回数
2)各国・地域のオリンピック、世界選手権大会への出場回数
  男子
  ②女子
3)オリンピック及び世界選手権大会の成績
  ①男子
  ②女子

 ハンドボールの国際化は1928年アムステルダムオリンピックの折りに国際アマチュアハンドボール連盟(IAHF)が設立され、1934年にインドア(7人制)及びアウトドア(11人制)の国際統一規則が制定されたことに始まる。
 男子では第一回の世界選手権大会が、インドア、アウトドアともに1938年に開催された。女子はインドアが1957年,アウトドアが1949年に開始された。その後競技会はインドア、アウトドアの二本立てで開催されてきたが、世界の趨勢はインドアに移行し、アウトドアの世界大会は男子で第7回大会(1966年),女子で第3回大会(1960)以降開催されなくなっている。
現在では、アウトドアのハンドボールのあったこと自体知らない人も多い時代である。オリンピックでは、国際アマチュア連盟が設立された8年後のベルリンオリンピックではアウトドアのハンドボール競技が初めて正式に開催種目となり、次いで開催地となった東京でもハンドボールが開催種目となる予定であったが、戦争による開催返上で、東京オリンピックは中止となる一方世界選手権大会も開催されなくなった。戦後、1946年にコペンハーゲンで新しく国際ハンドボール連盟が設立され、インドア世界選手権大会は男子が1954年に第2回を、女子は1957年に第1回の大会を開催し,今日に至っている。オリンピックは1972年ミュンヘン大会、女子は1976年モントリオール大会より,インドア種目として再開されて今日に至っている。
 インドアのオリンピック大会は現在(2015年)まで11回(女子10回)、世界選手権大会24回(女子21回)開催されている。期間にして男子77年(女子56年)である。(以後、特に断りがない場合は、大会に関する記述はインドアハンドボールを示している)
 競技力の国別ランクは、国際連盟のウエブページで見ることができる。これは世界大会の各種別の成績をもとに点数化しその合計によってランキングされている。
 本稿では、フル代表の男女の成績から,世界の競技力の状況を探ってみたい。

1. 近年の各国の競技力 

            男子2005年〜2015年
            女子2005年〜2013年
 ハンドボールの競技力が高い国(強い国)を、推定するために、ここでは過去の成績を一つの資料として考察したい。前述の間に世界選手権大会は男子6回、女子5回ある。オリンピックが2回ある。そこで男子は8回の世界大会の成績から、女子は7回の世界大会の成績から競技力を探ってみる。方法としては、成績を数値化して総計し、順位を算出する方法をとっている。
 世界選手権大会は1位を24点とし、最下位の24位の1点まで1点刻みとする。
オリンピックは参加が半分の12チームであるために1位を24点とし、最下位の12位2点まで2点刻みで数値化している。
 この方法が適切であるとは思わないが、便宜的にこの方法で数値化し、考察してみたが、妥当なランク付けができたと考えている。実際の成績を参考にしながらランクを見ていただればと思います。

 

2.過去から現在までの各国の競技力

            男子1938年〜2015年
            女子1957年〜2013年

1)各大陸のオリンピック、世界選手権大会出場回数から
(男女それぞれ第1回から現在まで(男子77年間、女子56年間))

表1は大陸別に見た、世界大会への出場回数である。発展の歴史的な背景や競技力の違いにより、圧倒的にヨーロッパからの出場が多いことがわかる。
ヨーロッパ大陸のみで全体の参加国・地域及び出場回数の59〜70%を占めている。オセアニアにおいては唯一オーストラリアが世界大会への参加国である。

2)オリンピック、世界選手権大会への出場回数から
(男女それぞれ第1回から現在まで(男子77年間、女子56年間))

① 男子

 表2はオリンピック、世界選手権大会への出場回数を示したものである。両大会を加えた参加回数では1位のスウェーデン29回出場から始まり10位のポーランドまでヨーロッパの諸国が占め、その後アジア勢からトップで韓国が入っている。その後同回数でアフリカ勢のアルジェリア、エジプトが入り続いて16回の日本が入っている。アメリカ勢ではブラジルがトップであり13位で入っている。
 ここで考えなければならないのは政治的な理由により、独立した国家や統一した国家があることである。7位にランクされているドイツは、東西ドイツのいずれかの参加回数を加えるとトップにランクされることになる。クロアチアは17位であるがランク7位のユーゴスラビアから独立してきたことを考慮すればドイツと同様トップレベルにランクされる。ロシアもソ連からの独立であり、その競技力が引き継がれているとすれば、上位にランクされることは間違いない。
 オリンピックや世界選手権大会に参加することは、開催国でない限り、厳しい予選を経ての参加であり、競技力の一面を表していると考えて差し支えないであろう。両大会にフル出場すれば35回である。トップ5位までにランクされている国の出場率は71〜83%であり、現在までの77年間における世界大会の常連国と言える。したがって参加回数から見てスウェーデン、スペイン、デンマーク、フランス、ハンガリー、アイスランド、それに加えてドイツ、クロアチア、ロシアの9カ国は男子の世界における強国といえると考える。
 ヨーロッパ以外では、アジアでは韓国(11位),日本(14位),アフリカではアルジェリア、エジプトの12位、アメリカではブラジル(14位)が他を引き離している。
 オリンピック出場で目を引くのは、スペインの11回中10回出場である。それに加えて政治的な理由から統一・独立したドイツやクロアチアも出場の経過から考えて同等であると考えられる。ヨーロッパ以外では韓国の7回(2位)が目につく。日本は出場回数では4回あり、世界の13位の国である。ただ、1988年ソウルオリンピック以来出場は途絶えている。

②女子(最初の大会から現在まで56年間の成績から)

 表3は、女子のオリンピック・世界選手権大会の出場国・地域(以後国)及び出場回数を示したものである。女子では男子と異なり、両大会に出場した回数順では10位までにヨーロッパ以外の国が入っていることである。アジアから韓国、中国、日本が入りアフリカからアンゴラが入っている。
 現在まで開催されたオリンピックと世界選手権のトータル回数は(10+21)の31回であり、トップ5のハンガリーからデンマークまでの出場率は68%〜81%であり、ほぼ男子と同様の値を示している。男子と同様にロシア、ドイツ、クロアチアはトップ5に入っていないが、政治的な理由を考慮すれば,トップ5に入っていると考えられる。
 出場回数から見た強国としてトップ5のハンガリー、ルーマニア、ノルウェー、韓国、デンマーク及びロシア、ドイツ、クロアチアをあげることができるであろう。
 オリンピック及び世界選手権大会に出場した国は60カ国あるが、そのうちの37%の国はこの56年間にどちらかの大会に1〜2度出場したことがあるだけである。
 大陸別にみてみると、アジアは前述の通りであるが、アフリカ勢ではアンゴラが17回と他を引き離している。アメリカ勢ではアメリカがトップであるがアルゼンチンが後を追っている。オセアニアは男子と同様にオーストラリアだけが出場している。
 オリンピックに目を向けると最多出場は韓国の8回である。2位のハンガリー、ノルウェーと2回の差がある。4位は中国及びアフリカ代表のアンゴラで5回の出場である。政治的な理由を考慮すればロシアがトップグループの中に入る。
 世界選手権大会では、何と言ってもルーマニアの第1回大会から現在まで21回の大会にすべて出場していることであり輝かしい足跡である。それを追ってハンガリー、ノルウェー、デンマークそして5位の日本と続いている。日本も出場回数という面では世界のトップグループに入る成果を残している。韓国は日本より1回少なく6位である。政治的な理由を考慮すれば、ドイツ、ロシア、クロアチアもトップ5に位置するであろう。

3)オリンピック及び世界選手権大会の成績から
(男女それぞれ第1回から現在まで(男子77年間、女子56年間))

①男子

 表4は、オリンピックと世界選手権大会の現在までの成績である。
 優勝した経験のある国はヨーロッパの7カ国・地域である。現存する国では3カ国のみである。2回が最多であるが,クロアチアは旧ユーゴからの独立国であり、旧ユーゴは過去2回の優勝経験があることから、クロアチアの2回の優勝に膨らみがあると考えるべきである。同様にロシアは旧ソ連からの独立国であり、旧ソ連も過去2回の優勝経験やソ連崩壊後EUN(バルト三国を除く旧ソビエト連邦構成国家によって構成された選手団、チーム)の優勝があり、そのことを加味して考えるべきであろう。
 優勝以外で注目すべき成績はスウェーデンとスペインである。スウェーデンは準優勝4回、8位以内の入賞回数は7回である。スペインは3位が3回あり8位以内入賞は8回あり、この2カ国は、優勝こそないもののオリンピックにおけるトップレベル国といえる。
 世界選手権大会では、優勝回数はフランスの5回を筆頭にスウェーデン・ルーマニア(4回)、スペイン・ドイツ・ロシア(2回)がある。
 優勝以外の注目すべき成績では、準優勝国としてクロアチア・デンマーク(3回)、3位の旧ユーゴ(4回)、ポーランド(3回)である。メダル獲得ではスウェーデンが24回中11回、フランスが9回と抜群の獲得率をしめしている。8位以内入賞では、24大会で50%以上の受賞率をおさめているいる国として、高い順からスウェーデン、デンマーク、フランス、スペイン・ドイツ、旧ユーゴ・ハンガリーがある。
 両大会の成績からでは、優勝回数はフランスがもっとも多く7回を記録している。続いて4回のスウェーデン、ルーマニア、3回の旧ユーゴ、クロアチア、旧ソ連、ロシアがつづいている。
 両大会でメダルを獲得したことがある国は20カ国で、現存する国では14カ国である。アジアの韓国、カタールを除いてすべてヨーロッパの国であり、優勝経験を持つ国はヨーロッパのみであり、競技力はヨーロッパに偏っているのが現状である。
 メダル獲得では15回のスウェーデンがトップで、12回フランス、10回ルーマニア、9回旧ユーゴ、8回クロアチア、6回スペイン・ドイツ・旧チェコスロバキア・旧ソ連とつづいている。
 優勝回数以外で注目すべき国として、メダル獲得は少ないが、入賞回数の多いデンマークやハンガリーは注目すべきである。また、3位4回のポーランド、旧ソ連からの独立国ロシアの優勝5回、人口32万人のアイスランドの入賞回数12回も注目すべきであろう。

②女子

 表5は女子のオリンピック、世界選手権大会の成績である。
 オリンピックでは、優勝回数の多い順にデンマーク(3回)、ノルウェー・韓国・旧ソ連(2回)、旧ユーゴ(1回)である。デンマークは4回のオリンピック出場で3回の優勝を3連覇で飾っている。韓国は、決勝に5回出場していて頂点を争う試合にもっとも多く出場した国である。ノルウェーもそれに次ぐ4回の決勝進出を果たしている。現存する国で優勝経験のある国は3カ国である。男子ではヨーロッパの国がトップレベルを形成しているが、女子では、アジアの韓国が頂点の一翼を担う成績をのこしている。オリンピック出場は8回であるが、そのすべての成績が4位以内であり、メダルの獲得もトップの6個である。ヨーロッパ勢ではノルウェーが韓国に次ぐメダルを獲得してる。
 世界選手権では,優勝ではロシアの4回が最高である。次いで旧ソ連・東ドイツの3回,ノルウェーの2回がある。2回以上優勝したのはこの4カ国であり、現存する国ではロシア、ノルウェーの2カ国のみである。ヨーロッパ以外で優勝経験があるのは、韓国とブラジルのみであるが、男子がヨーロッパだけであるのに比べて、女子の方が競技力に広がりがあると言える。メダルの獲得では、今まで名前が挙がってこなかったハンガリーがトップの9個を獲得している。つづいてノルウェー(8個)、旧ユーゴ(7個)、旧ソ連(6個)、デンマーク(5個)などが続く。
 両大会をみてみると、優勝では旧ソ連の5回、つづいてノルウェー・デンマーク・ロシア(4回)、韓国・旧東ドイツ(3回)である。旧ソ連は競技力において抜群の成績を残し、そこからの独立国であるロシアも素晴らしい成績を残していることは、長期にわたる女子ハンドボール界・強国の徴である。メダルの獲得を見てみるとノルウェーの13個がトップであり、続いてハンガリー(12個)、旧ユーゴ・旧ソ連(9個)、デンマーク・韓国(8個),旧東ドイツ(6個)、ロシア(5個),フランス(4個)と続き、これらの国は,女子の強国といえよう。

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