(4)意志決定のしかた

① 即興即断的

見て判断して行動するのには時間がかかる。しかし,時間のかかるのは, 対応動作では不利な状況となる。見て判断し,筋肉に指令を与えて行動するまでの神経回路に要する時間と,筋が収縮弛緩を繰り返し動作する時間とは,訓練によって短縮できる。状況の判断と行動は,反射的な域に達するまで訓練されねば役に立たない。反射といえば,条件反射が思い出される。条件 射とは,ある一定の刺激が与えられるとある一定の行動がなされるものであ る。  

幼児のうちは,ある刺激に対して“判断’’がなされ,行動していたものが, しだいに“判断’’ということが意識されなくなり,無意識的に行動がなされ るようになる。ボールゲームの技術も同じようなものであるが,また大きな 違いもある。  

与えられる刺激は,常に違っているということであり,一定の刺激に対し て一定の行動ではなく,無数の異なった刺激に対する,無数の複雑な行動と いうことである。ただ反射的に判断しなければならないというのは同じであ る。どういう場合にどうするかという訓練は非常に多くの練習回数を行って はじめて無意識化する。練習の場では,初めのうちは,状況の判断に時間が かかっても,意味のある行動をするように練習すべきである。  

ボールゲームは,パワーや動きの速さが技術の決め手になるのではなく, あくまでも相手や味方の中で有効に動いていくことが決め手になるのである。有効に動くことは,判断の問題であり,これには経験が必要である。うまいと言われるプレーヤーは,即断にして,最もその場によいプレーをするものである。長い経験の中で,場の読みとそれに対する適切な行動の追求があってできたものである。「即断にして状況に応じた行動をする」即興こそ,ゲームを支える個人の戦術である。

② 意図的

即興的な判断に加えて,相手や味方の動きを都合のよい状態に持っていく ことも必要である。「意図的に場を作っていく」ことは高度な判断であるが,上達するためには,「意図的」「必然的」ということを目指さなければならない。

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