ボールまわしやシュートの時、ゴールキーパーはどんな構え方がよいか?

どういうスタンスで構えれば最も効果的かという問題については各人によって各種各様のことが言われています。しかし人それぞれ形態も異なり技術も異なっているので、どの構えが最もよいとは言えません。要はいかに敏速に動くことのできる構えをつくるか、またその構えをすることによってシューターにいかなる心理的圧迫を与えることができるかです。

(1)敏速に動くことのできる構え

ボールがまわされ攻撃のポイントが次から次へと変わっていく時、ゴールキーパーがそれに遅れることなく位置を変えてて構えることは基本的な技術です。パスの方向を読み敏速に動かなければシューターに先手を取って構えることはむずかしく、腰高で腕が上がっている構えではボールまわしについていくことは困難です。腰を少し落として腕を自然に曲げ、動物が獲物を狙うような構えがよいでしょう(写真Ⅰ①〜③はシュートにそなえた構え、③〜⑥はパスまわしに対する構え)。

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(2)相手に与える心理的な要因を考える

いつでも敏速に動くことのできるということが構えを考える際に大変重要なこととなってきますが、いくら敏速に動いたところで、人間の動作やスピードには限度があるので、構えの形を変えることによって、シューターに心理的な圧迫を与えることを考えます。

一五七頁に述べた「さそい」とも関係してきますが、写真Ⅱのような構えをすれば左右のゾーンがあいているように見え、写真Ⅲのように両手を上にあげた構えではわきから下があいているように見えます。また、写真Ⅳのように、前に出て大きく構えると、あいている部分がないように見え大変な心理的圧迫を与えることができます(ここでは、この構えから写真Ⅴのように最も動作のしにくい頭上をシュートされますが)。

構えというものは、これでなければならないというものではなく、ゴールキーパー自身の動作のしやすい構え、また相手に対しての心理的な要因を考えての構えなど、一人のゴールキーパーによって各種各様の構えができなければなりません。

(3)形態面・体力面を考えて

大きい選手と小さい選手とでは、おのずと動作の仕方が違ってきます。大きいゴールキーパーでは、あらゆるコースのボールに対してその場からとることができますが、小さい選手では、あいているゾーンが大きくなり、それだけ大きな動作をしなければならなくなります。コーナーボールに対しても、大きな選手ならその場から軽くとれても、小さな選手は、ステップを踏み大きなジャンプを必要とします。それだけ時間がかかるわけですから、大変不利と言えます。

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思い切った大きなジャンプをするためには、手を跳ぶ方向に振り込んでジャンプします。例えば、立幅跳を考えてみると手を上にあげたままで跳んだのでは、タイミングが合わず大きなジャンプをすることができません。小さい選手が、手を上にあげた状態で構えていて、上のコーナーにシュートされたとすると手を上に上げたままでは大きなジャンプができないので、手を下におろしてからジャンプする方向に振り込んでジャンプするため、動作は遅れがちになります。

次の写真Ⅳは、ナショナルチーム入りした最も小さいゴールキーパー(上野・一七〇センチメートル)ですが、四方向に敏速に動くことのできる構えをしています。もっとも、写真Ⅶのように、形態的なハンディを補うために手を上にあげた構えを作って“上はは打たせないぞ”かという心理的な圧迫をシューターに与えて下に打たせる場合もあります。

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以上、いろいろな構えについて述べましたが、ゴールキーパー自身の状況や相手の状況をよく検討して、自分自身に合ったよい構えを習得する必要があります。


(大西)

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