実戦ハンドボールQ&A
タイミングをはずすということは、ゴールキーパーが今シュートを打ってくるはずだと思っていたのが、その時期がずれて、早く来たり遅く来たりで、通常のリズムとは異なったリズムでシュートされてとまどうことをいいます。よくわれわれが日常生活で経験することですが、信号で青になったと同時にタイミングよくスタートしようと思えば、前の信号が青になるのを確かめてからでは出遅れてタイミングが合わないので、反対の信号が黄色になり、それが赤になろうとする時を見計らって出ればタイミングよく出られます。それは黄色から赤になる時間を習慣的によく知っているからです。
ところがある信号によっては、黄色の時間が長くつづいているところがあります。いつもの調子でとび出すとなかなか青にならず交差点の真中で止まりなおして、右往左往した経験があることと思います。これは信号にタイミングをはずされたといえます。
シュートについても同じで、シュートには一定のリズムというものがあります。踏み込みと同時にバックスイングが始まり、フォワードスインズが始まってボールが手から離れるまでの個々の動作の時間には、普通に投げると大きな違いはありません。ゴールキーパーがボールにちょうどタイミングを合わせるためには、バックスイングの始まる時機から、フォワードスイングの始まる時機の間の動作を見て、ボールの大まかな方向と手元に来る瞬間を予測しなければなりません。
ところがその時機に合わせて跳び出したところ、その後の相手の動作が普通のタイミングのものとは違って大変長かったり、また逆に短かかったりでは、跳び出しの動作のリズムが合わなくなります。このことはボールが飛んでくるのを見てから跳び出すのではなく、ボールが離れる前の動作から跳び出しの判断をしなければならないからで、信号でいう黄色の時機に判断するのと同じことになるわけです。
このように予測によってタイミングを合わせなければならないので、予測をくるわせるような動作のリズムを持っていればよいことになります。
以上のようにタイミングとは時間に関することであり、シュートについてタイミングをはずす要因を述べると次のようになります。
ボールを握っての助走は、○、一、二、三歩のいずれかになります。通常のタイミングは、二歩か三歩です。それに対して○歩や一歩の肋走で早いモーションで打つシュートをクイックシュートといっていますが、これは肋走によってタイミングをくるわせる例です。
ハンドボールは、ボールを持って歩ける歩数が多いので、タイミングをくるわせる方法はいろいろな方法が考えられると思います。ノーステップでジャンプシュートモーションにはいり、着地してから打つなどは、クイックシュートとは違った意味でのタイミングのはずし方といえます。
非常に短い(時間的に)バックスイングもできれば、長いバックスイングもできるということがタイミングをはずす要因になります。バックスイングが終わった状態でキャッチすれば、時間的には最も短いし、野球のピッチャーのようにグルリとまわすようなバックスイングをすれば、時間は長くかかります。
バレーのスパイクのように手首だけを使っての時間の短いフォワードスイングもあれば、高い位置から腕を下に落としながら最終的にはサイドスローのようなフォワードイングを行って時間をかせぐものもあります。
通常よりはるかに早いスピードボールや超スローボールもタイミングをくるわす要因となります。ゴールキーパーの頭上をふわりと越えるシュートはよい例です。
空中での滞空時間は、以上の要因と相まってタイミングをはずす大きな要因となります。いくら早いバックスイングをしても時間はかかるので、ジャンプ力がなければそれだけ滞空時間は短くなり打つポイントも決まってくるわけです。空中で判断をして打てるくらいのジャンプ力を持つことができれば、ジャンプと同時に打つクイックシュートと空中でためて打つタイミングの遅いシュートとの間にいろんなタイミングのシュートを打つことができるので、それだけタイミングをはずす余裕が生まれてくるわけです。
以上シュート動作を分解してタイミングをはずす要因について述べましたが、大切なことは、うまくこれらの要素を組み合わせることです。例えば、早いリズムの助走から早いバックスイングとフォワードスイング、投げられたボールもスピードボールということになれば、急→急→急→急の組合せになり全体が「急」のリズムになりタイミングをはずすことはむずかしくなります。
そこで最後のシュートボールのスピードだけを落した、急→急→急→緩のリズムをとり、「速いぞ」と思わせておいて、ふわりと浮かせばタイミングをくるわすことができます。また、緩→緩→急→急の組合せもよいでしょう。このように、緩と急をうまく組み合わせることは、タイミングをくるわせる上で大切なことです。
(大西)