実戦ハンドボールQ&A
下段の写真は、九回世界選手権でのユーゴ対ポーランドの一戦のスナップですが、一九〇センチメートル近くある十一番のラザレビッチや七番のポタラヤクがジャンプしてブロックしようとするはるか上で、シュートが打たれようとしています。高いジャンプと高い打点は見事なものです。では、打点を高くするということはどういう利点があるのかということを述べてみます。
打点を高くして打つためには、肘を肩より高くあげなければなりませんが、肘を肩より高くあげるということは、手の先にスピードをつけるという点で力学的にあっているわけです。肘が肩より下がっている投げ方では、打点が低くなるばかりか、押し出すような投げ方になるので、スナップも生かせず、スピードが出ません。筋力のない女子には、このような投げ方が多いようです。
肘が上がり打点の低い投げ方は、大きなスピードを得られないばかりか、ボールの離れる点が体より前になるので、ディフェンスを前にして打つには大変不利となってきます。いくらジャンプをしても、ディフェンスの上から打つのは難しいものです。肘をあげた姿勢からの投げ方は、スピードが得られ打点が高くなるだけではなく、ボールの離れる点が体の真上くらいになるので、ディフェンスの前から打つには、大変都合のよいフォームとなってきます。次の連続写真Ⅰは、クイックモーションで打点の高い打ち方をしていることが、ジャンプの滞空時間やフォームからわかります。
高い打点からのシュートができるようになると、ディフェンスは、シュートをブロックする際にジャンプしてブロックしなければならなくなります。打点が高くなればなるほど、ディフェンスはそれだけ高くジャンプをしなければならなくなり余裕がなくなってきます。
そこで、高い打点からのシュートと見せかけてディフェンスを跳び上がらせ、サイドスローに切り換えて、ディフェンスがブロックしようとする手の横からシュートします。これも高い打点のシュート法を身につけていて初めてできる技術になってきます。連続写真(Ⅱ)は、高い打点と見せかけてサイドスローに切り換えてディフェンスをはずしてシュートしているところです。
目の高さから、目の高さに飛んでくるシュートや低い位置から足もとに来るシュートは、案外ゴールキーパーにとってとりやすいものですが、上から下や、下から上へといった落差のあるシュートは、ゴールキーパーにとってとりにくいものです。特に高い打点から、下にバウンドで打ち込まれるシュートは、大変とりにくいものです。
打点を高くするということは、それ自体も大変大切なことですが、それを基本として技術が発展していくので、ぜひ身につけなければならない要素です。 打点を高くする練習としては、以上述べたことを意識して練習することや、写真下や上図のように、上や下に障害物を置いてやるのもよいでしょう。
(大西)