大西武三

「人を見つけて」「育てる」は 指導の原点であるが、とりわけ人を見つけることは、指導者として先ず最初に直面する大切で骨の折れる仕事で ある。ハンドボールを始めた動機を以前に調査したことがあるが、その動機で最も多いのが人から勧められてというものであった。その人とは先生であり、友人であった。

それに対して当時人気スポーツで あった野球やバレーは、「そのスポーツが好きだから」や「テレビを見て」であり、動機が直接そのスポーツと結びついていた。爆発 的に普及するためには、人を間にはさんだ間接的なものより直接的 なものでないと駄目だと当時感じていたが、その感は未だに脱皮できずにいる。現状はやはり先生や部員が人集めに頑張らなければならない。

チームの強さ弱さに関係なく、どんな指導者でもこの人集めには 苦しんでいるものである。 昔話で恐縮ですが、私も高校では全国の強豪の一つに数えられるチームにいたが、強ければ強いで また人材も集まりにくいものであ る。

新学期にはよく勧誘した覚えがあり、こんな事もあった。 私「ハンドボール部に入らないか」 生徒「ハンドボール部だけには入 るなと言われている」 私「そんな事言うのは誰だ」 生徒「はい、父でこの学校の校長です」 と言うような笑い話もある。かと 思えば、中学校の先輩にうどん一 杯奢られてサッカーに入るはずがハンドボール部に入りナショナル チームまで行った者もいる。

今の時代、「うどん」に変わるものは何であろう。 ある強豪チームの中学校の先生は小学校を回って、個性のある生徒を集めるという。成績のよい子、運動能力の高い子、運動の好きな子、性格のよい子等。部は均一の人間の集まりではうまく行かず、 また個性のある子がいれば自然に人も集まって来るものである。  

問題なのはハンドボールの環境に恵まれないクラブの人材の確保である。顧問はいても生徒たちが主体となっているようなクラブでは、時としてその存在が危ぶまれ ることもあるだろう。

ハンドボー ルは、指導者がいなくなると部がつぶれるとよく言われるし、また 実際に目にしてきた。 今のサッカーのようにメディア が応援でもしてくれれば何とかな るだろうが、そんなこと今すぐに ハンドボールで出来そうにない。

2000年を目指して、熊本の世 界選手権を契機としてそのような状況を生みだす努力はハンドボー ル関係者が挙ってやらなくてはな らないことであるが。 一方、地道な方法として、ハン ドボールに今一歩入り切れない多くの指導者にハンドボールの面白さを知ってもらい、単なる顧問か ら情熱的なハンドボール指導者へと導いて行く事がある。  

そのためには、私的な交流はもちろん、公的な指導者の研修会を積極的に開催して、ハンドボールに対する理解を深めて頂くような施策を図っていくことが大事である。市、県、日本協会、連盟レベ ルでやって行かなくてはならない。 また、公認指導者の巡回指導など積極的な活用も考えられる。  

このような努力によって一人で も多くの指導者にハンドボールの面白さをわかってもらえれば、人 集めもやるだろうし、生徒もハン ドボールの面白さを伝えてくれるにちがいない。

「好きこそ物の上手なれ」の諺のごとく、好きになってくれさえすれば後は生徒も指導者も進んで活動に取り組むだろ う。そして単なる「好き」が「熱 中すべきもの」「生きがい」あるいは「自己実現」と言う高いレベルの欲求へと進んでくれるなら言うことはない。  

ハンドボールが好きで熱心な指導者が沢山おられる。自分のチームの育成はもちろん、ハンドボー ルの世界を大きくする施策にも力を貸して頂きたいと思う次第である。  

日々の練習

前回に引き継いで、日々の基本 的な練習について書きます。「ハ ンドボール指導法教本」を参考にして、ご一読下さい。

●ウォーミングアップ

▼ボールを使用してのアップ

ウォーミングアップはボールを使用しないで行うのが一般的であるが、ドリブルやパス、あるいはボールの扱いを入れながら行うのもーつの方法である。

ウォーミングアップを短時間で切り上げなければならないとき、技術練習を兼 ねながら行いたいときには有効で ある。

いろんなフットワークを行う中でボールハンドリング、パス、 ドリブル等を行う。徐々にスピー ドを上げると共に体操を入れながら行うとよい。  

▽例えば  

●対人パスキャッチ  省略

●ポジションパス

 対人パスはゲームでの位置関係を意識しないでパス動作やキャッチ動作に焦点を当てて行う練習であるが、このポジションパスはゲームの位置関係を意識して行うパス練習である。

またパスした後の位置取りも同時に習得する。チーム戦術に合う形で練習するのが最も効果的である。 図1は、パラレルパス攻撃戦術を想定してののポジションパス練習である。4〜5人がポジションにつきカットインしながらラテラス パスを行う。パスした後、ステップ バックしてすぐにポジションに戻る。

6-z1

●指示フットワーク

図2のように横一線となり、前にいるリーダーの手による方に指示に従ってフットワークを踏む。 リーダーの指示にいかに素早く反応するかがカギである。 時間は10秒から20秒位まで。約 5〜10回行う。

フットワークの技術と共に脚力 の強化のために行うので、出来るだけ全力で行う。

6-z2

●一対一の基本練習

数人が組になって1対1に必要なフェイントや防御のステップを約束的に練習する。

▼フェイント

1対1の突破動作をフェイントというが次の3つのタイプがあ る。

指導法教本参照の事

▼ディフェンスの足運びの練習

◎練習の要点

抜く側も抜かれる側もその動作に気をつけて行う。攻防戦ではなく動作の練習なのでオフェンス側は抜く方向を決めて動作し、それに対してディフェンスが正しい動 作で付いていくようにステップを踏む。

●ゴールキーパーの基礎練習

①動作範囲の拡大

図のような隊形からシュータ ーはシュートする。ゴール キ ーパーは、一方のゴールを掴み、シュートに備える。投げ られたシュートに対して上あるいは下への大きい動作でキーピングを行う(図6)。

②ブラインドシュートに対する 反応動作

図のように二人が立つ。その陰からシューターは動作を隠してシュートする。ゴールキーパーはブラインドシュート に反応してキーピングをする (図7)。

6-z6

●ポジションシュート

自分のポジションからシュート練習を行う。その際、ディフェンスをつける。ディフェンスの隊形 は一線、1・2・3、1・5など。 試合で使う1対1のステップを使 ってシュートする。ディフェンスは試合の状況を考えて少しプレッシャーを加えてやる。あるいはシュートブロックをする。

●ポジションでのコンビシュート

 2人、あるいは3人のコンビを 使ってシュートする。

●速攻・セット攻防

 省略

●6対6の攻防

6対6の攻防練習をする際には、 チームの戦術とそれに基づく個人の役割が必要である。チームの戦術は、チームのプレイヤーの個性をみて考えなれければならない。

攻防の戦術は一つか二つ、あるいはそれ以上持つことがあるが、それはそのゲームのゲーム構想による。ゲーム構想については先月号でその考え方について述べた。

今回は攻撃戦術にどのようなタイプがあるかを述べますので参考にして下さい。

◎攻撃戦術の例

①ローリング法

プレイヤーがローリングしながら攻撃する。攻撃位置がロ ーリングすることによって変わる。プレイヤーにオールラウンド的な能力が要求される。

身長が低いチームによく採用 される。

②フォーメーンヨン法

2、3のフォーメトションを 武器にして攻める。相手の状 況によってフォーメーションに変化させ対応する。初心者の攻撃戦術の導入にはよい。

フォーメーションの例は指導法教本チーム攻撃戦術と攻撃  例参照のこと。

③ポジションプレイ法

ダブルポスト戦術に代表され るように二人のポストプレイヤーを置き、フローターのパスとフェイントによってディフェンスを揺さぶり、チャンスを作って行く。

各ポジションのプレイヤーは攻めても元の位置(ホームポジション)に戻って来る。フロータ一にロングシュート力、フェイント力、パスアシスト力が要求される。個人の攻撃の持ち場が決まっているので、初歩的な段階では導入しやすい。

④カットインオフェンス法

以前の韓国が得意としていた戦術。ヨーロッパでも攻撃戦術の基本的な方法として導入しているもの。ポスト以外の5人がシュートを狙ったカットインを行う。パスは素早いラテラルパスを使用し、その合わせはパラレル(並行)で連続させる。

素早いパスワークと動きの中でディフェンスを揺さぶる。その状況からロングとカットイン、ポストプレイなどのコンビによる突破のチャンスを伺う。一線防御に対する攻撃法として理解しやすくバリエーションも作りやすい。ただフットワーク力とパスワーク力が必要。

⑤センタースリーからダブルポ スト移行法

センタースリーの攻撃からダブルポストに入り、ディフェンスのマークミスを誘うことによってチャンスを作る。1・5や1・2・3ディフェンスに有効な攻撃法として現在多く用いられている。

以上は現在ハンドボールの現場でよく見られる戦術の一部である。 その他の戦術も指導法教本に書かれているので参照して下さい。

6 対6はチーム戦術を身につける練 習であるので、チームのプレイヤ ーが目指す具体的イメージを共通 理解としてもってやらなければまとまりのある戦術を身につけることが出来ない。

●セットから速攻・ゲーム

 省略

●体力トレーニング

 指導法教本のトレーニングの項参照 

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