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 〈8の13〉

「相手に対する動作でのファールのとき,ボールでなくプレイヤーを対象としている場合には,罰則を段階的に適用しなければならない。

 この罰則の段階的適用は,スポーツマンシップに反する行為についても適用される。」

 く17の1b〉

 「次の場合は警告を与えなければならない。

(b)相手に対する動作のファールで罰則が段階的に適用されたとき。」 

〈17の3b〉

 「次の場合は退場させなければならない。

(b)相手に対する動作のファールが繰り返され,罰則が段階的に適用されたとき。」

 ハンドボールでは,バスケットボールの5ファール,7ファール,サッカーのペナルティーエリア,ラグビーのペナルティーキックのような,反則を犯すこと,繰り返すことが非常に不利となるようなルールがないため,どうしても反則で相手の動きを阻止するプレーが多くなる傾向がある。

 しかし,反則で相手の動きを阻止することはルールの精神に反する行為であり,反則による中断の多いゲームは決して面白いものではない。

 そこでハンドボールでは,ボールを対象としないファールについては,重大なファールではないものでも,繰り返されるたびに段階的に重い罰則を与えることで,その発生を防ごうとしている。

3.なぜ,段階的罰則の適用が生まれたのか

 1981年の改正以前のルールは,反則の発生を防ぐという意味においては非力であった。そのため,攻撃プレーのスピード化・高度化に対抗する手段として,反則によって相手の動きを阻止しようとする傾向が生まれた。その結果,ゲームがパワーとパワーの争いになり,ラフプレーが頻繁に起こるようになった。ドイツのプンデス・リーグにおいては,スター選手が植物人間同様となる事故まで発生した。当然,マスコミの総攻撃を受けることになった。「ボクシングとハンドボールのどこが違うのか,ボクシングはグラブをつけるが,ハンドボールは何もつけない格闘技だ」というように。

 1980年のモスクワ・オリンピックにおけるハンドボール男子決勝は,非常に激しい試合となったが,それを観戦していたIOC委員から,このようなダーティーな競技は,オリンピックにふさわしくないという意見が出されてしまった。

 この意見に危機感を抱いたIHFは,クリーン・ハンドボールのスローガンのもとに,よりスピードとテクニックを重視したハンドボールを目指して,1981年にルール改正を行った。

 このルール改正の中心になるものが段階的罰則の適用であり,反則の程度に関係なくその発生自体を防ごうとするものであった。

4 ルールの内容

 ゲームを成立させるためのルールの基本的内容(ゲームのミニマム)を以下の表に示した。詳細についてはルールブックを参照すること。

(Ⅰ)は,競技を成立させるための物理的条件の規定であり,

①競技場(コート,ゴール,ラインなど),②競技時間,③ボール(質,大きさ,重さ),④プレーヤーなど(相手・味方のGKとFPの役割,人数)に大別される。(Ⅱ)は,競技の方法についての規定であり,①ボールの扱い方,②相手に対する動作,③GKとゴールエリア,④各種スローの仕方,⑤勝敗の決め方,⑥罰則,⑦レフェリー,スコアラー,タイムキーパーの役割に分けられる。

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