大西武三
攻防の範囲はプレーイングエリア全域に及ぶ。ただ、この全域を守ることは得策ではないことは明らかである。次の表・グラフは、リオオリンピックでのシュートの成功率を示したものである。(表・図の用語説明)
一般的な試合でも、この傾向はおそらく変わらない。ゴールエリア付近が高いシュート成功確率を生むゾーンであり、このことを考慮して生まれたシステムが6・0ディフェンスである。
攻撃側がより高い成功確率の獲得を狙って攻めてくる「突破・シュートゾーン」重点的に守る基本的な考え方である。
0・6システムは成功確率の高いゴールエリア付近やブレークスルー、近距離のシュートを打たれないようにこのエリア内ではボールや動きにプレッシャーをかけるシステムである。6人のディフェンスがゴールエリアライン付近にポジショニングしボールを保持するプレーヤーにはフリースローライン近くまで詰めてプレッシャーをかける。ボールを離せば下がって守り、チームとしてくさび形を維持しながら守る。いわゆるピストンである。 世界的にみても、ほぼすべてにチームでこのシステムを基本としているが、個々の動き方にはチームによって特徴がある。
ゲームではこの0・6システムを基本として、状況に応じて、第2、第3のシステムを使うのが通常である。
0・6の弱点としては、攻撃の「ポジショニング・きっかけゾーン」に防御が及ばないために、あらかじめチームで準備した組織的なきっかけを使った攻撃をされることになる。また身長が劣っている場合は、上からの攻撃にさらされる危険性がある。
6・0ディフェンスでは、自由に攻撃を展開されるので、展開ゾーンにディフェンスを一人配置し、自由な動きとパス回しをさせないようにプレッシャーをかけようとするシステムが5・1ディフェンスである。6・0の弱点を埋めようとするものであるが、一人前に出た分、ディフェンスの守るゾーンが増える。そのことによって一人一人のディフェンスにより、1対1の強さが要求される。
4・2や3・2・1ディフェンスも考え方としては同様である。
この考え方は、相手チームが予め準備してきた攻撃をされないように、ポジショニングやきっかけの段階で、パスや動きにプレッシャーをかけて攻撃リズムやコンビをくずすことにある。チーム本来の動きをさせないようにプレッシャーをかけ、コンビネーションや個々の動きに乱れを生じさせて、無理なシュートをうたせたり、パスミスなど誘ったりしようとするものである。
図の例では、高い位置にシフトするプレス的なディフェンスですが、このようなプレッシャーのかかった状況では攻撃側はフリーで攻めざるを得なくなることが多い。
ディフェンスは各自が1対1を破られないようにプレスをかけながらゴールエリア前に攻撃側と共に下り、そこで基本的な0・6ディフェンスを行うものである(図)。うまくいけば攻撃側は間合いが近くなり、攻めあぐむことにより、不利なシュートをうったり、ボールを失う機会も多くなる。
同じプレス的なディフェンスでも、マンツーマンからゾーンへの変化するのではなく、最初から最後までマンツーマンディフェンスで相手にプレッシャーをかけ続けるディフェンス法もある。
特定プレーヤーに対するマークは、攻撃のキーマンになるプレーヤーを接近した間合いで守り、パスや動きにプレッシャーを加え、チームの攻撃に混乱を与える方法である。一人、二人、三人などをマンツーマンする方法がある。ただ、ディフェンスも守る範囲が大きくなることや、練習を積んでいないとコンビネーションにほころびがでて成功しない場合がある。世界や国内でもトップレベルになると個々の競技力が高いために、タイミングよく使わないと裏目に出ることが多い。
このディフェンスも、マンツーマンやプレスディフェンスと考え方は同じである。特定の地域に入ってくる攻撃プレーヤーにパスがなされようとしたとき、接近したり、接近しようとするフェイントをかけてプレッシャーを加え、攻撃のリズムを壊し攻撃の混乱を引き起こそうとするものである。
「展開ゾーン」や「ポジショニング・きっかけゾーン」にディフェンスプレーヤーを配置する防御法の弱点は、厚みを出せば出すほど個人が守るべきゾーンが大きくなり、成功確率の高いポストやブレークスルーを許すことになる。またこのシステムを長くとり続けるには、1対1の技術力に加え活動量を支えるスタミナも必要である。