Abstract

This study was to investigated an aspect of the aptitude for the shooting motion
(throwing)by analyzing the velocity and its change of the ball when performing the
forwardswing in handball.  
 From a series of experiments、it was founded the fact that a goalkeeper had to judge
The direction  and the right moment of meeting the ball in order to defend the shot prior
To its release by shooter. This judgement was made by prediction. Therefore,it was
thought that, by comparing with an average player,a skillful player had several factors toprevent a goalkeeper  from defending the shot. Especially,it was thought that a goalkeeper'sjudgement when to start the defending motion for the shot decided on the ball’s verocityand it's change in the forward-swing. Then, an aspect of the aptitude for shooting motionshould be investigated to compare the various shooter with the average shooter (mean ofall subjects)by analyzing the ball's velocity and it's change in forward・swing・
 Twenty two male students who were members of the handball club at the university
of Tsukuba were used as the subjects for this study. Two of them were skillful shooters、
ten of them were general shooters, eight of them were unskillful shooters, and two of
them were special shooters for the evaluation in the game not to coincide with the social
evaluation.   .
 This classification was based on the evaluation of the players in the game, the social
evaluation,the goalkeeper's evaluation. 0verall evaluation of the players was also made by coach who engaged in this study as one of the authors, by referring to above evaluationmaterials.
 The following results were obtained as aspects of the aptitude for the shooting motion;
 1) The ball's velocity in the moment of release in forward-swing of the skillful players
was faster than the average shooters(mean of all subjects).
 2)As to the change of ball’s velocity in forward-swing, the skillful shooters were
different from the average shooter (mean of all subjects)in their exertion. The velocity in
the first phase was slow followed by rapid acceleration to surpass the velocity of average
shooter. This indicated the fact that the acceleration of velocity in the first phase was
faster and that in last phase was greater than the average shooter.
 Therefore,it was considered that those were the aspect of the aptitudes for shooting
motion.

 I.緒 言

ハンドボールにおける投は,パスやシュートとして生かされるためには,対応動作の観点から捉える必要かおる。本研究は投をシュート動作としてとりあげ,ゴールキーパーに対する適切な投げ方の一面をフォワードスイングにおける速度変化から捉えようとするものである。 

フォワードスイングにおけるボールの速度変化が何故適性の一面となりうるかと言えば,以下に述べる通りゴールキーバー(以下G.K)のシュート阻止動作は,ボールがシューターの手から離れる前に跳び出しており,フォワードスイングにおける情報を最終情報とする予測による判断であるからである。 

対応動作は,刻々変化する相手や味方の情報を判断しつつ動作の仕方,そのタイミング及び方向を決定しつつ,同時に相手に対して自己の行なおうとする動作を予測されないように情報を送らなければならない。即ちG.Kがシュートボールを阻止するためには,動作の開始時機や方向をシューターに予測されず,しかもボールがゴールに到達するのに遅れないようにしなければならない。シュートボールに対してミートするためにG,Kが行なう瞬発的な動作を「跳び出し」5)といっているがこの跳び出しの特機を実験的に調査したものがある5)6)。 

それによるとペナルティスローの場合,ボールがシューターの手からリリースされる時機を0とすると-0.05秒(マイナスは,リリースされる前に跳び出|していることを示す。)から-0.02秒である。又ロングシュートの場合は,詳細な時機は記していないが、リリースの直前か直後であるとしている。ボールのゴールに対する飛来時間と動作時間を考えてもこれ以上遅く跳び出すことは不可能であることは,北川等による実験でも明らかである4)。北川等は「実戦的なシュート距離(両45° 10m 以内)からシュートされた場合,どんな構えをしていても各コーナーまで動作する時間はほとんどない」としている。跳び出しの時機の限界は,これらのことからリリースの直前か直後であることは明らかである。

この跳び出しの時機は,実際にG。Kが動き出した時機なのでその勤ぎ出しの判断となる最終情報を得た時期は、反応時間分もどってかんがえなければならない。この反応時間がどれほどかは不明である。 以上はG.Kの情報を読み取る時間的限界であるが、シューター側にも情報を読む時問的限界がある。即ちG.Kの動きを見てシュート方向を変えうる時間的限界である。土井1)2)等の実験では,その限界は,フルスイングでシュートする場合,バックスイングとフォワードスイングの境界時から0.1秒前のところであり,ためるシュートの場合は,フォワードスイング前0.05秒であるとしている。 

以上のことからG.Kがシューターに動きを察知されずしかもボールに遅れないように跳び田すことの出来る範囲は,フォワードスイングの始まる直前か直後までである。この問に最終判断し跳び出|すことは,シューターに対しては適切であるが,ボールに対してより正確にミートするためには,限界まで情報を読み跳び出す必要があろう。又跳び出しには時間的側面だけでなく,方向が適切でなければならない。GKの方向判断がどの特機になされているかは不明であるが跳び出しに方向がともなっていることから跳び出しの判断をする時機には方向の判断もなされているはずである。 (その判断が大まかな判断かある一点に対する最終判断であるか不明であるが)シュートボールがリリースされるまでの方向判断の可能性を実験的に調査したものがある7)。

それによると方向予測が的中する確率は,リリースまでのシュート動作を見た場合,93.5‰ フォワードスイングの途中まででは,48.3‰ フォワードスイングの開始時まででは、44.8%となっている。情報を受容する時間が長くなるほど方向予測の的中確率は高くなっている。 これらのことからG、Kは,跳び出しの時機や方向をより正確に判断するために限界まで情報を読み取ろうとすることが推察される。 

それにしても、G.Kがシュート阻止するためにはいかに予測能力が大切かを物語るものである。  

G.K側のシュート阻止の要因を述べてきたがこれらのことからシュート技術の要因を述べれば次の二点てある。

II,実験

1.被験者

被験者には,筑波大学男子ハンドボール部選手22名を用いた(表1)。

2.被験者の区分

被験者をG.Kにとってシュート阻止困難なもの(評価A),容易なもの(評価C),どちらにも属さないもの(評価B),特殊なもの(評価S)の4区分にした。区分の基準は公式試合(1978,春季及び秋季関東大学1部リーグ戦)での1試合平均得点,社会的評価,GKの評価をもとに筆者の1人であるコーチが総合評価して区分した。尚コーチ歴は11年,G.Kは選手歴6年7ケ月で現在ナショナルプレイヤーである。

Table 1, Result of investigation of all subjects.

Notes.Points per game-Average points of 14 game in Kanto students league at spring and autumn in 1978.                           

Evaluation of goalkeeper and overall evaluation of coach               
Social evaluation

3.実験運動及び条件

実験運動は、その裾からの全力投球で,正面に投げさせた。この投球動作は,ハンドボール競技ではペナルティースローの時に行なわれる要領のものとしたが,軸足は,前足とした。数回練習の後一投を撮影した。ハソドボールは新しい公認球で重さ425g周囲58cmである

撮影には,フォトソニックス・1PL高速度カメラを用い投球方向に対し直角の方向から43m離れて撮影した。撮影速度は毎秒500コマで,パルスジェネレーターを用いて1秒間に1000コのタイムマークをいれた。

4.測定方法

ボールが投球方向に動き出し、手から離れるまでのボールの位置の変化をナック製フィルムモーションアナライザーによって5コマ置きに分析した。
 速度,加速度は,5点移動荷重平均法を用いて平滑化した後求めた。
 実験は1978年9月16日に行なった。

 III. 結果と考察

1,全被験者の平均の速度変化プロフィール,

図1

図1は,全被験者の速度,加速度を0.01秒ごとに集計し平均したものを合成して作成した速度と加速度のグラフである。下に各時機に相当するシュートフォームが図示されている。横軸は時間の経過を示しているが,0はボールが完全に手から離れリリースされた瞬間を示している。投球動作は,バックスイング・フォワードスイング・フォロースルーと分けることができるが,本実験では,フォワードスイングの始まる時機を投球方向にボールが移動を始めた時機として分析している。フォワードスイングに要した時間は,平均0.34秒(S.D.0.09)最大0.58秒,最小0,20秒であった。

この時間の差は,投方向への体重の移動に影響されるものであり,投方向への急速な体の捻転による時間差ではない。図1ではリリース前0.24秒から示しているが,投方向への体重の移動を終えようとする時機である。本研究は,G.・Kの予測時機との関係で,実際に体の捻転が始まりボールに速度が増す時機からのものが重要であるので,リリース前0.24秒からのものを示している。 

ボールの速度は身体のボール方向への移動とともに徐々に増し,リリース前0.11秒から急速に加速を始める。この時機は,腰を中心として上体の捻転が始まった時機である。その後速度はますます加速され,リリース前0.03秒に加速はピークに達する。この時機は,上体の捻転が終了し肘を出しながら前方にボールを加速している時機である。その後加速はリリースに到るまで、急落する。しかし,加速は弱まりながらも速度は増し,加速が最大になったリリース前0.03秒時よりリリースまでの間に5.2m/secの速度の増加がある。

これは,リリース時の速度に対して26.5%の割合 を持つ。(表1)このことは,シュート方向に対 して前腕の返しやスナップによって相当の速度の増加がなされることを示している。各被験者の加 速度が最大限なる時機は一定しており,リリース前0.03秒の時機が18名,0.04秒時が2名,0.02 秒時が1名となっている。    

G.Kの予測がリリース前になされることを考えてこの速度・加速度曲線を考察してみると,それ ぞれが規則的な変化をしていることや偏差値もそれほど大きくなく,各時機において大きさも一定しているので,ほとんどの被験者が、これに似た曲線を持っていることがわかる。

これらのことを考え,G.Kがこの速度変化に慣れれば,予測もそれほど困難ではないと思われる。    

2.評価Aの被験者の速度変化について 

(1)被験者K・Nの場合

図2は被験者K・Nの速度と加速度のグラフである。比較のために全被験者の平均のグラフがつけ加えられている。又参考のために各時機に相当するK・Nのシュートフォームが図示されている。       

K・Nは現在大学1年生であるが,,高校時代は,インターハイや国体で活躍した選手で,シュート力は高校N0.1と言われていた。K・Nのポイントゲッターとしての特徴の1つは投動作そのものに,ゴールキーパーにとって阻止しがたい運動経過が含まれていると思われることである。大 学に入ってからもこの特徴は生かされ,1年生であるにもかかわらず,関東学生1部リーグで(春 季・秋季とも)N0.2のゴールゲッターになった。

K・Nの速度曲線を考察してみると,フォワードスイング初期の段階のにおいて全平均より遅い速度を示している。リリース前0.10秒より急速に加速が始まるが,リリース前約0.05秒まで平均より遅い速度を示している。その後,全平均の加速状態を大きく上回りリリースに至っている。 

リリース時における速度は全被験者中第2位である。最高加速度を得た後リリースまでの0.03秒間の増加速度は6.9m/secでこの.数値は全被験者中第1位である。これをリリース時の速度に対する割合で示せば31.3%となる。この割合は全被験者中4位である。しかし上位3人の者は,K・Nよりリリース時における速度が低い。

このことは大きな速度のなかで,大きな加速がなされていることを示している。このリリース前0.03秒に増加する速度とその割合の示すところのものは,フォワードスイング終末における前腕の握りやスナップの強さである。K・Nの場合,この時機における速度の増大は,大きいものであると言える。 

G・KがK・Nのシュードを阻止しがたいという理由の1つはこれらのことから次のようなことが言える。 

リリース時における速度が速いので,G・Kは予測の時機を早くしなければならない。ところが速度の増加の仕方が,平均的なものと異っているためにフォワードスイング初期からの情報では,適確な予測が困難なのであろう。又平均的な速度変化と異っているために,より遅くまで情報を見ていると最終速度が早いためにボールに追いつくことが困難であることが推察される。

K・Nの速度変化の状態は,緒言で述べたシュート技術の要因1)と2)を満していることになり投の適性があるといえる。

(2)被験者M・Sの場合

図3
 図3は被験者M・Sの速度と加速度のグラフである。比較のために全被験者の平均のグラフがつけ加えられている.又参考のために各時機におけるM・Sのシュートフォームが図示されている。 M・Sは,身長がそれほど大きくないが,1年次より4年次に至るまでチームの得点源として貢献している。又社会的評価も高い選手である。 

グラフよりうかがえることは,2の(1)で述べた被験者K・Nとほぼ同じ傾向にあるということである。 

最高加速度は,K・Nに次いで2位,リリース時の速度は,5位であるが,リリース前0.03秒間に増加する速度は3位,それがリリース時の速度に対して占める割合は32.4%でK・Nをしのいで3位である。上位2名はリリース時の速度は,M・Sより低い値を示しているのでM・Sは,速い速度の中で加速していることがわかる。 

M・SがK・Nと異っている点をあげるとM・Sの方がK・Nより速度の立ち上る時機が遅いということである。 K・Nの場合は,全平均と同じ時機で,リリース前約0.10秒から速度は立ち上り始める。これに対しM・Sの場合は,リリース前0.08秒からである。これはボールが加速を始めてから投げ終るまでの時間が短かいことを示している。この違いはフォームにも現われており,K・Nが体の捻転の終了する時機は図の上からでは0.09秒前であるのに対しM・Sの場合は,0.03秒前から0.06秒前である。K・Nが,体を捻転した後のしなりを使って投げるのに対しM・Sは体の捻転を使って投げるフォームの相違が見られる。 

ゴールキーパーがシュート阻止困難である理由は,K・Nと同様のことが言える。 

以上シュートが評価されている選手の速度変化から投の適性を考察してみたが,次にシュート力が評価されていないものと特殊なものを全被験者の平均と比較することによって投の適性をみる資料としたい。

(3)評価Cの被験者(8名)の場合。

評価Cの被験者の速度,加速度を0.01秒ごとに集計し平均したものと全被験者の平均の速度変化とを比較してみると次のことがいえる。 

全平均の速度変化とほぼ同様の傾向にある。リリース前0.11秒前から評価Cの速度がやや落ち始める。これは,体の捻転が始まる時機である。フォヮードスイング中期,終末に至るまで,わずかずつ速度に差がついてリリースに至る。リリース時における速度差は0.8m /secである。

(4)評価Sの被験者の場合

図4は,被験者T.Tと全被験者の平均の速度と加速度のグラフである。参考のために各時機におけるT・Tのシュートフォームが図示されている。 

T・Tがゲーム,こおいて活躍して社会的な評価があるにもかかわらず評価Sとして位置づけたのは,G・Kの評価が.「普通のシュートである」と評価していることと.筆者の1人であるコーチが,ゲームや練習でしばしば.G・Kにタイミングを合わされシュートを阻止されているのを目撃するからである。 

T・Tのリリース時の速度は全被験者中1位であり最高加速度も2位であるにもかかわらず「普通」であると評価されるのは.速度の増加のしかたが,平均のものと同傾向にあるためであろう。

又リリースされる前の0.03秒間に速度が増加する割合は,25.5%であり22名中18位で平均以下である。これは,リリース前の最後の振りが弱いことを示している。

G・K側から言えば,リリース時やそこに至る過程のボールの速度は平均のものに比べて高いが,速度の変化の過程が平均の者と似ているために予測か容易なのであろう。しかしボールの速度の変化過程は一般的であってもボールそのものの速度が速いので,G・Kに予測させる時機を早くさせることができる。ボールの速度が速いということ は,適性の一面を持つことになる。

(5)被験者F・Yの場合

図5

図5は,被験者F・Yと全被験者の平均の速度と加速度のグラフである。参考のために各時機における被験者F・Yのシュートフォームが図示されている。 

F・Yが評価Sに位置づけられた理由は,社会的に評価されているにもかかわらず,G・Kの評価が「阻止容易なシュートである」としていることや公式ゲームでの得点数やシュート成功率が社会的評価に見合っていないとコーチか判断したからである。 

F・Yの速度変化の特徴は,平均のものや他の被験者のものに比べて早い時機から速度が立ち始めるということである。リリース前0.13秒前からで22名中最も早い速度の立ち止り方である。その後徐々に加速され速度は上っていくが,加速のピークは,ほとんどの者がリリース前0.03秒であるのに対しF・Yの場合は0.04秒である。他の者に比べて少しではあるが,加速の落ち方が早いということになる。 

又リリース前0.03秒間の速度の増加は,リリース時の速度に対して21.9%を示している。これは22名中19位であり,前に述べた被験者T・Tと同様で,フォワードスイング終末の腕の振りの弱いことを示している。 

以上のことから,F・Yのフォワードスイングは,時間をかけたなめらかな速度の増加がなされるスイングといえる。リリース時の速度は第3位であり最大加速度は第6位である。 速度もあり,速度の変化,しかたも一般的でないにもかかわらず,何故「阻止容易なシュート」になるかといえば,時間をかけたスイングであるためにG・Kに対する前にD・Fに阻止する余裕を与えるということや最後の加速が弱いためであろう。しかしノーマークの状態ではF・Yのシュートは確率は高い。これはD・Fの要因を考えないならば,シュート技術の要因1),2)を満していることになるからであろう。 

結論

ゴールキーパーのシュート阻止のための動作は,予測によるものであるという前提のもとに,フォワードスイングにおけるボールの速度変化から投の適性の一面をみてきた。その結果次の4つの事柄は投の適性の一面としてとらえることができる。

参考文献

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