攻撃回数について

1.はじめに

ゲームは、攻撃側と防御側がボール保持をめぐって入れ替わりながら進行する。攻撃側と防御側がセットなっているが、一試合のうち攻撃する機会が何回あるのかを示したものが攻撃回数である。ゲームのテンポが速ければ攻撃回数は多くなり、遅ければ逆の結果となる。ルールの変更や、チームの戦術、個人の競技力などで、攻撃回数の多少は変遷していると思われる。

世界レベルでは、その攻撃回数はどのようになっているのかを知ることは興味深いことである。

 試合は、攻撃と防御が交互になされ、攻撃による得点によって、勝敗が決まる。攻撃できる回数のうち、すべてをシュートに結びつけ、得点出来ればよいが、自チームのミスや相手のディフェンスの状況によって、その成功率は上下する。

チームの攻防をスコアーの数値を用いて客観的に評価する場合、各項目の数値の多少や成功率が指標となるために、その基盤となる攻撃回数は重要な値と考えることができる。

2.分析資料

 以下の記述はIHFの2017世界男子ハンドボール選手権大会で公表されているデータをダウンロードして、それを資料として分析したものである。1ゲーム毎に攻撃回数が示されているが、明らかにそのデータに間違いがあるものが8ゲームあった。そのゲームに対しては、ビデオで検証してデータを修正した。

3.攻撃回数の数え方

攻撃回数の数え方は、ボールを得て攻撃権が始まったときからボールを失うまでの攻撃を1回と数える。攻撃はシュートかミスで終わるので、シュートとミスの本数を数えれば、総攻撃回数と見なすことができるが、実際は、シュートの後、ディフェンスやゴールキーパーにブロックされたり、またゴールポストに当たって跳ね返ったりする。ボールを獲得しり、スローインになって再び攻撃の機会をえる。従ってシュート1回で攻撃が終わらず複数のシュートをする場合が多々あるので、シュート回数とミスの合計を攻撃回数とした場合は、実際の攻撃回数を上回ることが多い。

4.リバウンドで再攻撃になる回数

2017年世界男子ハンドボール選手権大会全84試合のゲームデータを分析すると1試合で平均3.6本のリバウンド等によるシュートがある。最大は11回(BRN—DEN)でのBRNで本大会で4番目に多くリバウンドを獲得したチームである。BRNとDENでは平均身長で14.3cmも差があることが一つの要因であると考えられる。最小は0本である。(下表)

table1

5.両チームの攻撃回数の差について

1試合で攻撃できる回数は、相対する両チームにほぼ同数与えられている。スローオフするチームが相手の攻撃で終われば同数であるが、攻撃で終わった場合は1回多くなる。後半は逆のチームのスローオフになるので、最終的には、同数で終わるか、片方のチームが1回多くなるかである。前述世界選手権の全84ゲームでは、両チーム間の攻撃回数の差は、差がないゲームと1回差があるゲームは、それぞれ42回であり同数であった。

6.攻撃回数について

1ゲームにおける攻撃回数は、全84試合のデータを分析してみると以下の通りである。

table2

1試合で平均して54回の攻撃機会がある。裏を返せば防御機会があるということになる。チームとしては、この攻撃、防御機会に、どのような戦術、作戦をもって臨むかが大きな課題である。そして日々のトレーニングは、このゲームの1回1回の攻防を如何に対処するか、プレーヤーやチームに対して技術、戦術的な構想が練られることになる。

 この攻撃回数のコントロールは、相手チームのこともあり、完全にすることはできないが、自チームの攻撃とディフェンスの戦術の考え方により、ある程度は調整がきくものである。また攻撃力に対して防御力が弱く、簡単にシュートまで持って行ける場合は、攻撃回数は多くなる。

 この分析による攻撃回数の最大65回は予選リーグにおけるTUN対ANGの試合であった。両チームとも5:1ディフェンスのスタートであったが、攻撃のきっかけでシュートしている場面が目立った。両チーム合わせて得点が77点であり、この大会で最大であった。

攻撃回数が最小のゲームは予選リーグでのBLR対CROであり、44回の攻撃回数であった。平均から10回、最大から21回も少なくなっているが、このゲームは、ミスが両チームとも4本であり、合わせた8本のミスは全ゲーム中最小であった。両チームとも6:0ディフェンスのスタートであるが、攻防力が均衡していることやシュートチャンスを伺いながらの攻撃に継続性を持たせていたことから、この数字になったと思われる。

7.各国の攻撃回数 (平均、最大、最小)

次の図は、各国のすべての試合から平均、最大及び最小の攻撃回数をグラフ化したものである。大会成績順に1位のフランスから最下位のアンゴラまでを示している。

fig3

各国の攻撃回数をみてみると上位8チームを見ても平均の最高値であるノルウェーの約57回と最低値のカタールの約51回では6回の差がある。また同じチームでも攻撃回数に大きな差があるチームとそうでないチームがある。チームの戦術や作戦、また両チームの競技力によって攻撃回数の多少は決まってくると考えられるが、次の様な要因が考えられる。

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