5 3次元解析装置

           [東海大学体育学部で保有]

キーワード ] 技能の比較、客観分析、捻り、軌跡、速度、角度運動徴表の表現

1)研究の狙い

シュート技能など、世界のトップ選手の技能や初心者の技能を比較分析して、その指導ポイントを解明できます.

また、先に述べたエリア解析にもこの装置が必要です. 

以下研究例
・技術指導の成果を3次元データから検証し、指導手順と指導内容の有効性を確認する.
(速度、角度、軌跡の比較などから)
・トップレベルのサイドシュートを分析し、指導の際の資料とする.
・トップレベルのサイドシュートについて、プレーヤーの意識するフォームと現実のフォームを比較し、そのギャップを検証する.

2)分析機器


・VTRカメラ2台(デジカメ)シャッタースピード100コマ/秒以上 2万円程度
          パソコン(5万円程度)
・3次元解析ソフト DKH社製 (30万円程度)

3)分析画面

sample5-z1

図15 スティック画面

sample5-z2

図16 腰・肩角度の経時的変化

上記図16は腰(左右腸骨稜を結んだ線=赤)と肩(左右肩峰を結んだ線=黒)をゴール面に対する角度として示したもので、縦線のフォワードスイング開始時期にほぼ同じ角度になっています。これは左方向(右利き選手)にスローする特徴で、この動作をゴールキーパーが読み取り(先取り)シュート阻止の行動をしていると思われます。

4)操作手順


・分析課題が決まったら、課題解決に適した撮影場所、カメラ設置位置を考え、分析に必要なコントロールポイントをVTRカメラ2台(100コマ/秒以上)で撮影する.
・分析したい画像の測定ポイントを3次元解析装置で入力する.
・データ変換や作図操作を行い、3次元解析に進むと瞬時に作図(速度、関節角度等の変化が時系列に従い表 示)される. 

5)データ処理時間

撮影場所を決め、カメラを設置し、コントロールポイントを写し込むなどの実験準備に約1時間程度必要です.3次元解析で解明したい分析項目をあらかじめ準備してデータ入力の準備をしておくと、2試技目からのデータ入力時間は、シュートやフェイントの動作の場合30分程度になります.分析データはエクセルデータに変換できるので、時間をかければ解析目的に合ったデー タ処理や統計処理を行えます.

6)分析例

(1)平岡秀雄(1980)ハンドボールの防禦における対応動作研究 -動作先取について -東海大学紀要体育学部.10.95-103

目的:個人攻撃戦術における先取り動作(予測の要因)を解明した.

方法:さまざまな攻撃動作のさまざまな攻撃時機にその動作をマスキング(画像が途中で消える)し、熟練者や未熟練者が動作の先取りが可能な時機を明らかにした。次に熟練者が先取り可能で、未熟練者は先取りできない時機の攻撃動作を3次元解析し、各動作の特徴を未熟練者に指導して先取りできる時機が早くなるかを検証した.

結果:未熟練者の攻撃動作の先取りが速くなったので、指導した攻撃動作の特徴は動作の先取りのために重要な要因であることを示した.

(2)平岡秀雄ほか(2007)ハンドボールのシュート技能に関する運動学的考察 フォワート
スイング中のボールの軌跡に着目して- :東海大学スポーツ医学雑誌.19.23-31

目的:シュートのコツを解明するため

方法:ディフェンスの壁理論、フォームとシュート方向の特徴だけでなく、フォワードスイング中の軌跡を変化させることが重要であることを証明するため、3次元解析で得点時とシュートミス時のボールの軌跡を明らかにした.

結果:シュートのフォワードスイング時にボールの軌跡を変化させることが重要と分かった.

7)分析結果の現場利用


・シュート技能の向上を目指す指導では、ボールの軌跡を変える投球方法を指導.
・初心者指導では必ずボールの軌跡を変える投球方法を指導している.

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