3 VTRカメラ

                         [各自で調達可能]

[キーワード] ビデオ画像解析、印象分析、指導手順、マスキング

1)研究の狙い

 コーチング学の主要な研究課題は、有効な指導法(指導手順など)に関する知識を多くの研究者や指導者に伝えることです.そのための研究手順を示す事と、誰もが保有するVTRカメラを利用して報告する.

研究例
・ビデオ画像から指導者(有資格者)によるハンドボール攻防場面の評価(印象分析 採点法)の妥当性を検証できます.
・ハンドボールの技術指導の成果をVTR画像から動作時間(客観分析)や印象分析で比較出来ます.

2)分析機器

ビデオカメラ(カメラ価格2万円から コマ送り出来る、撮影コマ数60コマ以上が望ましい)
  パソコン  (データ処理用 既存のものを利用できる)

3)分析画面

指導段階別シュート成功率
今回実施した指導内容と指導手順は、シュートの成功率を高めるために有効であった事を示している(図11)

s3-p1

図9 指導場面

s3-z1

 図10 練習課題例

s3-z2

図11

4)操作手順


(1)指導計画、実験計画を立案する.…失敗の無いよう時間をかけて練って下さい.
(2)指導場面を固定したビデオカメラで撮影(ボール保持からリリースまで)し指導した.…指導時間20分
(3)動作の分析(指導段階別)…ステップ数の変化をコマ送りでカウント 分析時間30分程度、シュート動作分析
(動作時間、ステップ数カウントなどをコマ数から確認)2時間程度
(4)データの統計処理と報告書の作成…文章化(目的・方法・結果)5時間程度

5)データ処理時間

講習会を利用した指導では2時間程度からでもその成果を検証できますが、指導するの技術を習慣化させるには多くの指導時間を要します.指導の成果は、指導時期や指導内容を変更するごとに分析し比較するとよいでしょう.

各段階での分析時間は、コマ送りによる時間計算や動作の印象分析を行うので、数時間で評価できます.ただ、事前に印象分析の場合の評価基準(誰が見ても同じ評価となる)を充分に検討しておく必要があります.

6)分析例

(1)平岡秀雄ほか(2011)ハンドボ-ルのクイックシュ-トに関わる事例研究 第1報-コ-チングの手順とその効果- :東海大学スポーツ医科学雑誌.23.79-88

目的:ハンドボールのクイックシュート方法を指導する際の、効果的と考える手順を実践指導し、その有効性を実証した.

方法:指導場面をビデオカメラで撮影し、指導内容を記録すると共に指導に伴うフォームや動作時間の変化を分析しました.動作時間はビデオ(30コマ/秒)を60コマ再生して求めた.ステップ数も同様に コマ再生で確認した.指導後のクイック動作の変化は、印象分析(視覚情報)を行いました.

結果:本実験での指導手順により、練習課題に合致した形でシュート動作が改善された.この研究手法により、高額機器を利用しなくても指導の成果を検証できる方法を提示できたと考えます.

(2)平岡秀雄ほか(2008)ハンドボールの戦術的認知能力の評価法 ‐攻撃活動に対する状況認知と戦術的先取りについて-:東海大学スポーツ医科学雑誌.20.7-13

目的:プレーヤーが戦術的行動を判断する際に重要と考えられる、情報収集能力とその情報処理能力の一部を評価できる方法を開発しようとした.

方法:セットオフェンスの攻防場面をコートの上方から固定カメラで撮影する.次に各攻防場面をシュートに至る直前で画面を消せるように編集した.被験者は画面の消えた瞬間の攻防プレーヤーの位置をコート図に記号で記述し、その後シュートに至る展開を図示させる.図示されたコート図を評価基準に則り評価する.

結果:競技レベルが高いほど攻防場面の選手の位置を把握しており、その後の展開予想図も的確に表記出来た.

7)分析結果の現場利用

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