ゴールキーパーの適性は?

ゴールキーパーのおもな技術は、シュートボールの阻止とフィールドプレーヤーへのパスアウトの技術であるといえます。フィールドプレーヤーの技術が多種多様であるのに比べて、ゴールキーパーの技術の種類は比較的少ないといえます。しかし技術の種類は少なくてもシュートボールを取る取らないは、直接勝敗に関係するものであり、その技術いかんはチームの勝敗の「鍵」を握るものであるといえます。

ところで、フィールドプレーヤーについての適性は、そのプレーが多種多様であるために一概にこれだということはできないものであり、努力によって適性を得て一流のプレーヤーになり得ることは可能です。勿論ゴールキーパーの場合も同様ですが、目の前から、思いっきり投げられたボールを直接身体で受け止めることは誰でも出来るものではないでしょう。ボールに対する恐怖心に打ち勝てる性格の持ち主が先ず前提になるでしよう。一瞬のうちに飛んでくるシュートボールの方向が予測できれば恐怖心も緩和されると考えられます。身体が大きいとか運動能力があるとかも適性の一部ですが、心理的な適性が重要な部分 を占めます。心理的な性格も練習によって克服できると考えますが,生まれ育った性格として獲得している方が上達には早道と思いますが、活躍しているゴールキーパーの中には、身体や心理的劣勢を努力によってはね返している例が多く見られます。次に一般的なGKの適性について述べてみます。

(1)身体的適性

①身長が高く、からだに幅のあること。

ゴールの大きさが、一定不変である以上からだの大きさは、ゴールキーピングに対して決定的な要因となります。身長二メートル、からだの幅が一メートルといったキーパーが出現すれば、ゴールゲットすることは、大変難しいことになるでしょう。からだの大きいということがゴールキーピングに与える利点は次の三つです。これはキーパーの適性として考える時、最も基本的なものです。

ⓐ体重を移動することなく、手足を伸ばすだけで、ゴールの隅々まで動作をすることができる。

体重を移動するのに比べてはるかに動作時間は少なくてすみ、それだけ、ボールをよく見て取ることができるので、シュートの阻止は容易になり逆をつかれることも少なくなります。

ⓑポストやサイドなど近距離から打たれるシュートに対しては、前につめて、からだを壁にしてシュート阻止することができる。

このような場合、からだが大きいと完全にゴールをふさぐことができます。

ⓒ大きいキーパーは、ゴールをふさぐ面積が多いので、シューターにとっては、狙いどころが限定されるし、ヤマをはって先に動くということがないので、シューターに対して心理的に負担がかかり、思い切ったシュートをできなくさせる。

②からだが敏捷に動くこと。

からだが大きいだけでなく、スピードを持った動作ができることはいうまでもないことです。即ち、パワー、スピード、敏捷性など体力的要素がすぐれていることが望まれます。

③反応時間が短いこと。

反応すべき情報を得てから、脳で判断し筋肉に指令が行くまでの時間を反応時間といっていますが、瞬間的な動作を要求されるだけに反応時間も短い方が望ましい訳です。

(2)精神的適性

①予測力にすぐれていること。

ボールが手から離れる前に、ある程度の方向や離れる時期を予想できないと、キーパーはボールを止めることができないので、予測力は重要な適性の要素となります。

②シュートに対する恐怖心のないこと。

ボールに対する恐怖心は誰でもあるものですが、不思議に初めから恐がらない人もいます。このような人は、生まれながらにして適性の一面を持っているといえます。

③集中力があること。

一瞬の出来事を時間的に拡大解釈できる能力のある人が望ましい。一瞬のうちのちょっとした情報から判断する力を要求されるので、それを見のがすような人であっては、うまくいきません。

④性格的にムラがなく、落ち着きのある信頼できるプレーヤーであること。

最後の砦を守るキーパーは、フィールドのプレーヤーに対するよきアドバイザーであり、どのような事態になってもくさったり、試合を捨てたりするような態度をとってはなりません。

以上キーパーに関する適性的なことを述べてきましたが、世界では一九〇センチメートル以上、日本のトップレベルでは一八〇センチメートル以上の人が活躍しているようです。しかし、一七〇センチメートルそこそこでも立派にトップレベルで活躍しているプレーヤーもいるので、身長の低い人も、「身長」以外の適性的な要因を努力して獲得し、立派なプレーヤーになってほしいものです。

(大西)

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