ま え が き

ハンドボール競技が、日本に伝えられてからすでに40年以上になります。そして競技のもつ体育的効果の大きさや、スポーツのもつ醍醐味を手軽に味わえるなどから広く一般に普及し、現在では、中学・高校・大学をはじめ社会人のクラブでも盛んに行われるようになりました。そして、これらのチームのたゆみなき努力によって、技術的進歩もめざましいものがあります。

しかし、技術の上達を目指している皆さんは、日々の練習や試合をしている中で、「こんな場合どうすればいいのだろうか、「どうすればあの技術をマスターできるのだろうか」、 「なぜ反則になるのだろうか」といった悩みや疑問を常にもちながら努力されていることと思います。

この本は、そういう選手やコーチが直面する悩みや疑問をできるだけ集め、その問題に一つ一つ具体的な場面にそった技術解説や練習法などを加えた問題解決的コーチ書です。

技術を書物で説明することは、大変難しいものです。特にボールゲームの技術は、ある一定の技術を習得しても、それをいかに使いこなすかというところに問題があるからです。 例えば、シュートの基本的な形を習得しても、ゲームでどのように生かすかということになりますと、そのシュートの形を習得する時のように、イメージを描きながら練習回数を重ねる努力をすればよいというわけにはいかないのです。相手の状況を読み、心理を読み、また自己や味方の状況が刻一刻変化するなかで「いま何をなすべきか」ということを判断し、習得した形を使いこなしていかなければならないからです。「使いこなす」ということは、知的な側面であり、プレーヤーの心の状況がそこにあらわれているものです。このことをよく考えて技術習得に取り組んでほしいと思います。

腕のよい大工さんは、必要な道具を持ち、それを使いこなしてよいものを創り出していきます。道具だけよくても使いこなす能力がなくては何にもなりません。スピードあるシュートができても、それを使いこなせるかどうかが問題なのです。練習を多くやったからうまくなれるというものではなく、いかに考え、工夫したかということが大切なのです。ここにスポーツのおもしろさがあります。

技術のコツというものは、書物によって得られるものではありませんが、ヒントを与えてくれたり、考え方が深まるということには手助けとなるものです。特に技術は、プレーの流れの中で理解する必要がありますので、理解をより深めていただくためにも一流ゲームからの連続写真と図を多用して解説しました。

本書が、ハンドボール選手の悩みや疑問の解決に役立ち、これからの技術向上に役立つなら筆者として望外の喜びです。

この本を著すに際し、大修館書店編集部の平井啓允氏には大変お世話になりました。ここに厚くお礼申し上げます

著者一同

目次へ