シュート時のゴールキーパーとシューターの動作で大切な技術的要素は何ですか?

下段の図は、実際にディフェンスの前からロングシュートしたものを16ミリメートルカメラでとり、シューター、ディフェンス、ゴールキーパーの動きを別々に描き出したものです。図の番号は、時間の経過を示しています。

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(1)判断について

この中で技術的に大切なごとは、シューターなら打ったシュートがゴールキーパーとディフェンスに対して方向やタイミングがはずれているかどうかということです。一方ディフェンスやゴールキーパーなら、ジャンプのタイミングや方向がシューターに対して合っているかどうかということになります。ゴールキーパーやディフェンスのジャンプ動作や、シューターのシュート方向へ向かっての腕の全力動作は一瞬のうちに行われるもので、そのタイミングや方向の良し悪しが成功か否かに直接結びついてきます。

このような一瞬の全力動作は、途中でその方向を変えるというわけにはいかないものです。この図ではシューターは⑯の番号でシュート方向への全力動作(フォワードスイング)をしていますが、この全力動作には方向の判断と今投げるのだというタイミングの判断がともなっています。判断とそれに伴う動作は、同時というわけにはいきません。目でとらえて脳で判断し、筋肉に命令されて動作するまでに時間(反応時間)がかかります。その時間は条件や個人差によっても変わりますが、およそ0.2秒くらいです。

そこでシューターについていえば、⑯の番号で全力スイングが始まっていますので、その全力スイングの方向やタイミングを判断したのはそれより0.2秒前の⑬の時機以前で、ゴールキーパーやディフェンスの動きを見てからのはずです。方向は初めから決めていても、“今打つのだ”という判断は、最終的には図⑬の時機までにしているのです。

ゴールキーパーやディフェンスについても同様のことがいえるのですが、ゴールキーパーはまず大まかに方向を判断して跳び出しながら、順次、細かい判断をしながらボールに対してミートします。最初の大ざっばな動きをするのにも、どの方向へ、いつ跳び出すかという方向と時機の判断が必要です。時機が早すぎますとシューターに見られて逆を打たれてしまいますので、シューターが判断した後でしかもボールにミートするのに間に合う時機でなければなりません。

図では⑱と⑲の間の時機に跳び出していますが、この跳び出しの判断は、それより0.2秒前の⑮と⑯の間のシューターの動きを最終的なものとしてそれ以前の動作を見ての跳び出しであるわけです。しかもその跳び出しには、大まかな方向判断もともなっているので、⑮と⑯の間の時機を最終として方向と時機(タイミング)の判断も行っているのです。

大まかな跳び出しの後は、その後のボールの動きをみながら手や足の細かい動作で対処していくわけです。

大まかな最初の跳び出しに失敗すれば、シュートはまずとれないといえます。また、最初の大まかな跳び出しに合っていても、その後の判断が悪ければ、手にかすって入ったり、バウンドに足を合わせきれなかったりして入れらぃれてしまいます。

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(2)よみについて

シューターでいえば、番号⑬の時期までに判断するわけですが、それまでの時期のディフェンスやゴールキーパーの動作は、ジャンプしたり跳び出したりする以前の動作になるわけです。シューターは、そのような時期のディフェンスやゴールキーパーの動作から、その後の動作を予想して判断しなければならないわけです。

反対にゴールキーパーやディフェンスは、シューターが最終的に判断する番号⑬まではシューターに動きを読まれないようにすることが必要です。同様にゴールキーパーは、最初の大まかな跳び出しを判断するのは、番号で⑮と⑯の間以前であり、最終的に判断する⑮と⑯の間のシューターの動作はバックスイングが終わり、フォワードスイングが始まっている瞬間です。

このような瞬間に入るまでの動きでゴールキーパーは判断するわけですから、判断が不確実になるのは当然ですが、そのような時期にこそ方向を読むことがまた重要な課題でもあるわけです。シューターがフォワードスイングに移るまでの目や顔の動きによって方向を読んだり、ディフェンスとの関係によってシュート方向を読むことが重要な技術的ポイントです。

反対にシューターは、フォワードスイングに入るまえの動きを読まれないようにすることが必要で、シュート方向を見ないで打つことや、ディフェンスにかくれて打つことも技術の重要な面になるわけです。

以上、シューター、ディフェンス、ゴールキーパーの関係を判断やよみ(予知力)というものにポイントを置いて述べました。球技の技術は対応の技術であり、相手の動作を見て判断することも大切ですが、自分の動作も相手に見られていることを忘れてはなりません。相手の動作を正しく読みつつ、相手に誤まらせるような動作を相手に見せることも重要です。“さそい”はその典型です。(さそいの技術は157頁参照)。このような心理面もよく考えて練習しましょう。

(大西)

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