実戦ハンドボールQ&A
パスは、攻撃の目的であるシュートに結びつけるためのチームの最大の攻撃手段です。単に正確に味方に渡るだけ では、攻撃の有利な展開を期待できません。従ってよいパスをするためには、次の二つの条件が満たされていること が望ましい訳です。
これを具体例をあげて説明しますと、
オフェンスAは、シュートを狙わず、パスを渡すBの方 を向いた状態で、パスを渡したとすれば、パスする前は、 オフェンスAとゴールとを結ぶ線上に、ディフェンスとゴ ールキーパーを引きつけ、二対一の状態を作り出し、Bを ノーマークにしているが、パスを渡した瞬間には、ディフ ェンスAもゴールキーパーも、オフェンスBとゴールとを 結ぶ線上に立つことができる(図2)。
即ちディフェンスも、ゴールキーパーも、オフェンスAのパスとその方向を、 パス以前から予測することができ、オフェンスBは、パス をもらっても、有利な展開ができない。シュートも狙わず、パスの方向も予測できる状況でパスをしても、二対一の有 利な状況を生かすことができない。このようなパスは、初心者的な段階では、多く見受けられるもので、正確にパスを渡しても、ディフェンスやゴールキーパーに対して有効 なパスだとはいえないわけです。
図3のように、オフェンスAは、シュートを狙った状況 で、味方にパスをしたとしましょう。「シュートを狙った 状況でのパス」というのは、パスされる直前までは、シュ —トを打つ状況とまったく同様な状況のことで、ゴールに 向かってのスピードはあるし、目はゴールキーパーをとら え、パスの動作も、バックスイングまでは本当のシュート と変わらず、パスされて初めて、パスであるとわかるよう なフォームであったとしよう。
また、パスが離された後の ボールのスピードもあったとしよう。そのような状況で、 パスをもらったオフェンスBは、ディフェンスやゴールキ ーパーに対して、完全に有利な状況であるといってよい。
即ち図4のように、オフェンスBがボールを保持した瞬間 ディフェンスも、ゴールキーパーも位置が取れておらず、 よい位置をとるために移動している途中であり、このよう な状況では、シュートもフェイントも、相手の動作が一方 向に向かっているために、自由自在であるからです。
解りやすく二対一の場面で説明しましたが、これが、二 対二でも同様であるといえます(図5)。
オフェンスAが、パスされるまでシュートと同様のフォ ームとスピードであれば、ディフェンスAやゴールキーパーが釘づけになるのはもちろんのこと、オフェンスBにつくディフェンスBも、ディフェンスAのためにシュートやフェイントのフォローをするために、オフェンスAの動き に目を奪われ、ポジションも移動しなくてはならない。オ フェンスBは、そのわずかなスキをついて、ポジションの移動をすることができるために、パスをもらった時には、 二対一の時と同様に大変よい状況で、攻撃することができるのです。
①の条件のみでよいパスとなる場合は、本当の意味ではないといってよいのですが、速攻でパスし合うプレーヤー 同志が、完全にノーマークになっていたり、ゴールキーパーのスローで、完全なノーマークの状況のところへパスを 送るといった場合には、ディフェンスやゴールキーパーの ことを考えず、受けよいパスを渡すだけで、よいパスとな り得るものです。
ハンドボールの攻防におけるよいパスとは、前述のよう に二つの条件が満たされていれば、すべてに通用するパス となるものです。二つの条件を満たすよいパスとは具体的 に次のようなものです。
(大西)