大西武三

本指導法の連載も回数を重ねてきたが、こちらの事情で内答に一 貫性が見られず申し訳なく思っている。

今回はルールと技術の題で書いてみたい。

共通の土台で試合をする

ハンドボールをハンドボールな らしめているものはルールである。 日本ではIHF(国際ハンドボー ル連盟)が発行した英語版競技規 則を翻訳して「ハンドボール競技 規則」として(財)日本ハンドボール協会が発行販売している

この競技規則書をもとに日本各地で 競技されているわけである。オリ ンピック年毎に改正されているが、 皆さんこれを手に取って読まれた 事があるでしょうか。  

言うまでもなく、チームが平等の条件で試合できるのは共通に理解するルールがあるからである。 しかし、もしチームによってルー ルの理解度が違ったら、お互い気 持ちよく試合をする事ができるで しょうか。

幾度となく不愉快な思 いで試合を終えた経験をお持ちの人も多くおられる事と思います。 特に身体接触が伴うハンドボールでは、相手に対する動作のルールの理解度あるいは尊重度によって、気持ちよく試合できるかどうかの 分かれ道となる(図1)。

8-z1

ハンドボールの理念

ハンドボールとはどんなスポー ツであるかはルールブックを読むだけではわからない。それを基に してハンドボールをどんなスポー ツにして行くかと言う考え(理念) がなければならない。ルールの精神を理解し、それを実際のプレイに置き換えるにはハンドボール観・理念がその根本になければならない。特に指導者やレフェリーはハ ンドボールとはどんなスポーツなのか、あるいは将来に向けてハン ドボールをどの様なスポーツにしていかなければならないか、その理念をしっかり持って指導し、あるいはレフェリングして行かなけ ればハンドボールの発展はおぼつかない。

ルールのテストをしてみると

私の大学でも、ハンドボールの ルールのテストをやる事がある。 勿論テストを受けるのはハンドボ ールを専門にやってきていない人がほとんどである。従ってルールテストの内容はいたって簡単なも のばかりである。 採点の段になって、ハンドボー ルを専門にやってきたものはまず 間違わないだろうと思って採点してみると、これが大間違いで、意 外と基本的なルールを知らない事 にびっくりする。一般の学生の中 でルールの勉強をしてきた者がハンドボールの学生よりよい点を取 る者がいるくらいである。

指導者としての反省

何故この様な結果になるかと言 えば、ルールは試合や練習で見様 見真似で覚えているからである。 指導者もルールをルールブックそ のものを活用して教えている事は まずない。それぞれが感覚的、体 験的にルールを身につけているた めに、いざ正式に問題を出される と簡単なものまで間違ってしまう のである。

ゲームで時として、感覚的に覚 えているルールでは間に合わず、 思わぬ大きなミスをしてしまってゲームを落すという例を幾度か見てきている。やはりハンドボール を規定しているルールとそれを運 用するレフェリングをしっかりと 指導者もプレイヤーも理解する事 が必要であり、そのことは技術・ 戦術を高める方法にもつながるも のである。

ルールの用語が変わった

平成5年度から8項目のルール 改正がなされたが、日本ではこれを契機としてルールの用語もIH F英語版の用語を出来るだけ尊重する方向で改正され、まだ全体的に理解がなされていないようなのでここでとり上げたい。

図2、3は変更された用語を四 角で囲って示した。図で説明したもの以外で変更されている用語と しては、  

8-z2

8-z3

ルールとブロック

私の地域では小学生のハンドボー ル少年団があり、私の家内や大学の選手が指導者として毎週土曜日に教えている。今年のチームは小さい子が多いので、ブロックプレイで割り込む方法を教えようという事になった。 早速教えたところ、学生の指導者 は「小学生にブロックプレイは難 しい」という。「それよりディフェンスに当たって崩すブロックプ レイの方が易しくて効果的ではあ りませんか」という。「当たって 崩すブロックプレイは反則でしょう。うちのクラブは正攻法で戦う ので、そんな事は教えられません」 というと当の学生は初めきょとんとしていたという。

私も、正攻法で戦うのが試合と思っているので、 学生にそんな方法を教えた事がない。そう言った学生はまだ大学にきて間もない事から、感覚的に身につけてきたプレイの中に、当たって崩すというブロックプレイがきっと正当なプレイとして身についているのではないかと思われる。

恐らくディフェンスをしていて後ろからドシンとブロックされ崩されて抜かれた経験があるのだろう。 審判も見えなくて見逃したために、「こういう方法もいいのだな」と 感覚的に正当なプレイとして覚え てしまったのかも知れない。

ゲー ムにおけるレフェリングは神業の ごとくであり、大事なポイントになるところは判定するものの、見 逃されている違反はいくらでもあるはずである。そういう中で育ってくるプレイヤーはきちっとしてルールの勉強をしない限り、本当 のハンドボールのルールに触れる事が出来ない。

正当なブロックプレイ

ブロックプレイが成り立つためには

ルールブックの 第8条 相手に対する動作

次のことは、許される。

8の3 ボールの保持に関わらず、相手の進路を胴体でさえぎること。

が満たされていなければならない。 胴体であることから腕を使って相 手を抱き込むようなことは許され ない(図4)。またさえぎること は相手の進路に当たらずに立つこ とであり、相手に当たったり、お 尻で押したりすることは反則にな る(図5、図6)。

8-z49-z6

ブロックプレイの種類

 ブロックプレイには相手の前面 に立つ「パラバン」 (図7A) と 側面に立つ「サイドブロック」(図 7B) がある。またブロックを利用してのプレイであるブロックターンがある。ブロックターンとは ブロックした後に反転し、ディフェンスのチェンジのスキを利用し てノーマークになる方法である。

8-z7

パラバン、サイド両ブロックとも ブロックターンは可能であるが、 サイドブロックからのターンの方 がよく使用される。 特にディフェンスの背後からはいるサイドブロックでの一種であ る「縦ブロック」からのターンは よく見られる効果的なブロック法 である(図8)。

5-z8

縦ブロックについて

縦ブロックが使われるようにな ったのは昭和30年代の終わりからローリングオフェンスに代わってセットプレイが流行し出してからである。  

図のようにダブルポストでシュ ートを狙いながらパスを回し出す と、ディフェンスは当時どうして も2・4ディフェンスの隊形をと らざるを得なくなり、前のディフ ェンスを背後からブロックにはい る都合のよい状態となった(図9)。

8-z9

戻る