大西武三
前回、ゲームをもっとやって欲 しいと述べたが、では自分達でゲームをやる際に、どんなことを注意してやればよいのだろう。
今回はチームの戦術を考える際の手がかりについて述べたい。
ゲームをやってみるといろいろ な局面があることがわかる。以前、 ソリダリティ講習会の報告でルント氏の考えを述べたが、一般的には4つの基本的な局面と反則等によって生み出される特殊な局面の 5局面がある。
この5つの局面をチームとしていかに戦うか、その方法を準備しなければならない。
図1は5つの局面が循環する様子を示したものである。
5つの局 面が同じ経路を通って循環するのでなく、ボールの保持、あるいは 保持を失うことによって局面の切り替えが瞬時にしてまた多様な経路で行われる。この基本的な5つのや多様な局面の切り替わり局面に対して各チームはどのように攻め守るかチームの戦術を考え練習しなければならない。
速攻は一線目にでたプレイヤーがシュートを行う一次速攻、防御 の関係によって一線目と二線目の 攻撃者が参加することによって行 われる二次速攻、そして防御者が 帰陣しても一線目、二線目、三線 目全体が参加して行われる三次速攻がある。この三次速攻は、速攻 のシステム化でありコート全体を 使用した6対6の攻防と言える (図2)。
近年のハンドボールの特徴の一 つはこの三次速攻である。明確にこの速攻を世界に示したのは19 88年のソウル・オリンピックの 旧ソ連のチームである。現在では トップレベルにあるチームは、この3つの速攻を使いこなしている。 常に速攻形態によって相手コート に攻め込むことにより速攻とセットの間に切れ目がなくなりゲーム はハイテンポ、スピード化してい る。
セットの攻防局面を時間経過か ら見てみたものが図3である。チ ーム独自の戦術はこのそれぞれを どのようにするかによって決まっ てくる。現場ではいろいろなやり 方が見られるが、それにこだわる ことなく、指導者やプレイヤーの 個性によって独自なものを考えて もらいたい。
図の項目を説明するために標準的なチーム戦術であるセンタース リー(ワンポスト)攻撃と1・2 ・3ディフェンスを例として具体 的に説明したい。
位置取りとはチームとして攻撃 あるいは防御するために最初にプレイヤーがポジションに配置する ことである。
図のように攻撃側はワンポスト(3・3)の位置取りを行いパスを回して組織的攻撃の準備をする。防御はマークを確認 し、図のように一線目に一人、二 線目に二人、三線目に三人と1・2・3ディフェンスの位置取りを行う。この最初の位置取りには各 種のものが考えられる(図A)。
攻撃のきっかけは整った防御隊 形を崩す最初の攻撃のことである。 この攻撃のきっかけをどの位置からどのような方法によつて行うかは、戦術として重要である。
個人やコンビによるきっかけがあるが、 例では45度プレイヤーが個人的な 1対1の突破から始めている。ここで防御と攻撃の個人の競技力の差によって各種の可能性が生まれる。
ディフェンスは45度の突破に対してチームの戦術に応じた動きを行う。センターはポストをマークしながらシュートに備える。45度 は1対1を阻止すべく守る。トップは45度のフォローをしながらプレッシャーを加える。45度の切り 込みに対して3人が積極的に防御し、他はボール方向へ寄りながら 次のプレイに備える。
この段階で攻撃側の1対1突破力が上回っていればシュートをしたり、自分を守るディフェンスとフォローにくるディフェンスを引き付けてアウトナンバー(攻撃の数的に有利)を生み出せるので、パスによって有利な攻撃状況を作 ることが出来る。
1対1防御力が上回っていれば、1対1の状況は 崩れず、無理な体勢でシュートを余儀なくされたり、攻撃プレイの 遅延や方向づけをされて、ディフ ェンスを有利な状況にさせてしま う。
「ハンドボールは1対1に始ま って1対1に終わる」といわれる が、個人の1対1の技術と戦術は、チーム戦術の成否を握る決定的な 要因である。
Bのきっかけから図のようにパ スが回されたとする。各々のパス は各プレイヤーがBと同じ様に多様な可能性の中からパスを選んだものである。その間、ボールを持たないプレイヤーもよい位置を占 めるために動いている。ディフェンスを崩さず、あるいはよりよい 突破の可能性を求めてプレイをつ ないでいる状況が展開の局面であ る。
図Cではダブルポストに移行し ているが、ダブルポストの状況で のフローターがボールを持ってい るときのl・2・3防御の基本的 な守りは、きっかけのところで述 べた各防御プレイヤ」の動きに加 えて次のことを注意しなければな らない。
ボールのある側が4:3 であり、ない側は3:2のアウトナンバーになっているからである。 そのためにトップと45度は対角の ポストプレイヤーにパスをされないように注意をしなければならない。
展開局面から4のパスそ受けたプレイヤーが、多くの可能なプレイの中からポストプレイヤーにアシストパスを入れてシュートに持 ち込んだとする。この最終的なグループ戦術によるプレイが終結局面である。
きっかけ、展開、終結に用いられる個人的あるいはグル ープの戦術には各種のものがあり、それを状況に応じて使いこなせるようにしなければならない。防御はボールを獲得することが目的であるが、攻撃の動きについていくフットワーク、ボールを奪うため のテクニック、そして何より相手 の動きを先取りして攻撃の意図を摘み取る判断力が必要となる。
チームの戦術は多様なそして複雑な動きによって表現されるが、 どんな戦術であってもそこには原則的なものがある。ハンドボールの原則を挙げると、
等があり、この原則を達成するために細かい原則が生まれる。