大西武三
今月号からハンドボールの指導法について連載することになりました。とりあえず、私が、技術・指導担当理事をしていることもあり,この稿を進めて行くとにになりました。現場の指導者との要望を受けながらQ and Aの形式で、指導に於ける身近な問題を取扱ながら書き進めたいと思っております。
この講座が一方通行にならないように是非とも皆さんから指導上の諸問題を提示して頂き一緒に考えて行ける事を期待しております。
是非,指導に関する質問を機関誌編集係までお寄せ下さい。
日本のハンドボールの競技人口は約10万人チーム数は約5000である。従って指導者は5000人以上はおられるはずである。もし,このあらゆる階層の指導者が指導を進めて行く結果,ハンドボールの普及や競技力の向上につながって行くとすれば,どんなに素晴らしいハンドボールの世界が開けることであろうか。
ハンドボールの華々しいトップレベルの大会等を見ているとつい底辺にある名もないチームやプレイヤーの事を忘れがちである。しかし日本のハンドボールがこれらの底辺によって支えれれていることを決して見逃してはならないし逆に底辺をより豊にしてこそ、ハンドボールという高い山がそびえることを肝に命じなければならないと思う。
指導者が連携する道は一通りの方法ではありません。一生に一度,一人だけでもハンドボール界を背負うような人材を見つけていただければ,それは素晴らしいことであり,何にも変え難いハンドボールに対する貢献ではないでしょうか。
指導者のチームへの接し方は千差万別である。ハンドボールを専門的に学び指導者となられている人、経験は全くないのに学校側から頼まれ、顧問の名の元に指導者になっておれれる人。情熱の全てをハンドボールに賭けている指導者がおられる一方、学校や家庭の状況で情熱を賭けようにも賭けられない人。また目指す方向も日本のチャンピオンを目指しておられる人がおられる一方、それどころかチームを維持するのがやっとと言う方もおられるはずである。
何れにしても日本の競技人口の80パーセントは高校生以下で占められている。本講座としては中高校生のしかも専門的にハンドボールをやってこられない指導者を対象として、ハンドボールの指導法に関する資料を提供することによって少しでも指導のお役にたてればと思います。
第1回は実際的な内容にふれることが出来ません。徐々に実際的具体的な内容にして行きたいと思っています。私も現場の指導者であり,悩みは多々あります。情報を交換しつつ悩みを分かち合いたいと思います。
日本ハンドボール協会では指導委員会のメンバーが中心となって、1992年の暮れに大修館書店から「ハンドボール指導法教本」を出版した。この指導書は、公認指導者の養成用の本として企画・編纂されたものである。しかし、それにこだわる事なく、全ての指導者、あるいはプレイヤーにも参考にしていただけるよう書いたものである。
指導法教本ではハンドボールに関する指導法の一通りを書いたわけですが、実際の現場では痒いところに手の届かない記述や説明不足もある事かと思います。それを補足しながら、また、時として引用しつつ、あるいは別の角度から書き進めたい。
ちょっと話はわき道に反れますが,この指導法教本の印税は日本ハンドボール協会の財源にもなります。是非一読して頂き、ご意見ご批判を頂きより良いものにしていきたく思っております。
ハンドボール指導法教本の詳しい説明は機関誌NO.326 1992年12月号にあります。
さて本題に入りますが,標題は,連載の第1回として、機関誌担当者から頂いた質問です。
この質問は、誰もが知りたいものであり、日々当面する問題でもあります。簡単に答えられるように思われるかも知れないが、実は考えれば考えるほど奥が深く、これに明快な答えを出せれば、ハンドボールの指導法を極めたと言えるものではないかと思います。
連載の一回ではとても書ききれるものでなく,いくつかの前置きや課題に分割して稿を進めて行くのがよいかと思います。
「日々の練習は・・・・?」の質問が出てくる背景には,指導者がハンドボールのゲームとはどんなものかその全体像がつかめない。或いは,ゲームを構成している要素が解らなくて,何をどんな風に練習して行けばよいのかが解らないといったことがあると思われる。
この連載で指導に関することを書いても,恐らく直接的な刺激にはならないのではと思います。書物などで理論的な勉強は必要ですが,それに加えて「百聞は一見にしかず」の例え通りトップレベルの試合や練習を実際にみてほしいと思います。またそのチームの指導者に話を聞けばより理解は早いことと思います。そうする中で自分なりの指導法を作り上げていくのが一番の早道ではないかと思います。
生徒に指導者が本物のハンドボールを感じさせる人は別にして,プレイヤーには「本物とはどんなものか」をを見せてほしいと思います。一流のゲームや一流のチームの練習を見せてやればハンドボールの技術や練習がどんなものであるのかを感じてくれるはずです。また,何よりも動機づけになり一石二鳥の効果があるでしょう。ましてや一緒に練習となればその効果は言わずともであるでしょう。「井の中で蛙」いるよりも指導者共々外にでていろんな人いろんなハンドボールの接してほしいとおもいます。
どんなチームでも練習のメニューは同じようなものである。ただ,計画的に練習を行っているか,練習の質量が正しいか,また練習に工夫がくわえられているか等には大きな差がある。
練習のメニューは大きく分けると次の4つである。
「技術づくり」という用語はないが,ゲームは技術を手段として作り上げられる。いわばゲームを作る道具になる。その道具を作るという意味で技術づくりという言葉を使ってみた。技術は判断とそれに基づく動作が必要であるが,技術の中で道具に匹敵するものが動作である。
ここでは, 主に動作を作り上げる練習である。シュートやパス,或いは2〜3人で行うポストプレイ等ゲームで使用する動きの形・パターンを習得する練習である。練習の要点としては動作を正確にまた習慣化するように回数を重ねることが大切である。
技術には個人のものとグループのものがある。
パス,キャッチ,シュート, フェイント(1対1の突破), デフェンス技術等
各種の突破法(カットイン,ポストプレイ,ブロックプレイ等)
各種の防御法(ピストン,チェンジ等
3対3の攻防など,相手がいる中で技術を使いこなす「攻防練習」である。最小単位は1対1である。状況を正しく判断して何をなすべきか動作を選択することが練習の要点である。
2対2の攻防
3対3の攻防 等
サイドや中央で,速攻やセットで
ゲームの構想に応じて,チームのプレイヤーに役割分担を行い,それを果たす練習である。最終的な練習の形は,7対7のゲームである。この練習を行うためにはチームがどの様な試合を行うのかその構想がなければならない。(ゲームの構想には別に稿で説明します)
セット
速攻
防御
特殊場面の練習
ゲーム形式での技術戦術的練習
技術はその動作を支える体力があって初めてその効力を発する。 ハンドボールの技術は相手との対応の中で発揮されるために,判断と技術と体力の三位一体が求められるが,体力はあればあるほど技術をより有効にする性質を持っている。
この項に関しては医科学委員会の西山先生が詳しく書いて下さいますので省略します。
技術練習を行う場合,技術を作る練習とそれを使いこなす練習を区別を意識して行うことが大切である。判断に重きを置いた攻防練習ばかりで,しっかりとした動作を習得する練習を怠ると結局は良い技術(技術・動作)が身につかず,将来の伸びを摘むことになりかねない。切れ味の良いどんな相手でも通用する技術(動作づくり,技術の手入れは常々の課題であり,使いこなしとは区別されなければならない。
「1対1の攻防練習」を行うとする。一方が抜き片方が守る。この中でオフェンスやデフェンスが行う技術(道具・動作)としては左記に示すようなものがある。1対1の攻防練習ではこれらの技術を相手に応じて使いこなすことが要求される。即ち,プレイヤーは刻々変化する状況を読み,何をするかの判断が求められるわけである。フェイク動作,間合い,抜く方向等が適切であったかどうかなど,デフェンスでは詰めのタイミング,方向の読み,動作の選択が適切であったのか等が試される。
判断が要求される1対1の攻防練習に対して,それに必要な技術づくりの練習がある。左記にある項目がそれであるが,今までの生活スポーツ経験から言えば出来るのから専門的に練習を必要とするものまである。1対1の攻防練習の状況から不足している技術を1対1の練習と並行して或いは習得させ,1対1の攻防がより良い技術(道具・動作)の連続とし
◎位置の取り(スタンス)
◎ボールのもらい方(カットイ ン,キャッチ)
◎ストップ
◎方向変換
◎フェイク
◎ドリブル
◎シュート
◎位置の取り方(スタンス)
◎詰め方
◎ボールプレッシャー
◎ボールカット
◎ボディプレッシャー
◎動きにつく
◎シュートブロック
◎シュートカット
◎シュートプレッシャー