Ⅳ 中学校1年授業実践事例(ザースボール)

小山 浩(筑波大学附属中学校教諭)

1 中学校でのハンドボール授業の位置づけ

学習指導要領では,ハンドボールを「E球技」領域のゴール型の種目として,取り上げるように示されています。ゴール型の種目に共通する技能を身につけることとし,「安定したボール操作と空間を作りだすなどの動きによってゴール前への侵入などから攻防を展開する」とされています。

多くの学校で,生徒が中学校に入って最初に触れるボール運動として,ハンドボールを取りあげるとよいのではないでしょうか。つまり,ハンドボールの教材としての特性を次のようにとらえることができると考えられるからです。

こうした特性をふまえて,ハンドボール単元のねらいを次のように整理しました。

~教師の側からみたねらい~
①ボールゲームを楽しむ。(技能)
「楽しむ」ためには,基礎的な技術の習得が必要であり,パスやキャッチ,シュートといった基礎的な技能を楽しみながら身につけさせたい。
②ボールを持ち,運び,投げ,捕る動作を,走りながら,またはジャンプしながらの中で適切に選択しながら行い,ゲームの中で作戦を立てたり,相手に応じた対策を練るといった過程を学ばせたい。(知識、思考・判断)
③ゲームや授業の運営に必要な,審判・記録・計時といった係り分担やゴールやボール,ゼッケンの準備など,充実した授業時間を送るためのマネージメント力を養いたい。 (知識、思考・判断)
④お互いに持っている力(能力)を持ち寄り,それに応じた役割を分担し ,ゲームに臨む。
そこでの補い合い・助け合い(サポート),意見の出し合い(コミュニケーションを大切にする態度を養いたい。(態度)
⑤ゲーム開始時,終了時の挨拶,ゲーム中のマナー,相手チームのプレーを尊重するなどフェアプレーに徹する態度を養いたい。(態度)

~生徒の側からみたねらい~
①「投げる動作は,人間として持って生まれた特別な動作。思いっきりボールを投げてみたい。」
②「ゴールに向かって思い切りシュートして得点するぞ。そのために,良いポジションに移動 して,ディフェンス(以下DF)のいないとこ  ろから確率の高いシュートを打とう。」
③「一人では,シュートしやすい位置でボールをもらうのは難しいかもしれない。味方と協力し,ディフェンスのマークを外す動きを工夫しよう。」
④「リーグ戦を企画運営するために,ボールやゼッケン,記録表の準備,対戦表や星取り表の作成をしておこう。」
⑤「他のチームの作戦を予想して,守り方や攻め方を考えてみよう」
⑥「ハンドボールの授業も終わったけれど,ボールを投げる力はどれくらい伸びただろうか。遠くへ投げるだけでなく,正確に投げる力はどうだろうか。」

2 単元計画

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3 ザースボールのハンドボール単元の中での位置づけ

今回取り上げるザースボールは,ゴール型に分類できる。ただし,単独の単元と考えず,ゴール型の内容の下位教材として位置づけられる。新指導要領ではゴール型の中で,1,2年次は「ボール操作と空間に走り込むなどの動きによってゴール前での攻防を展開すること」,3年次は「安定したボール操作と空間を作りだすなどの動きによってゴール前への侵入などから攻防を展開すること」とされている。共にボール操作と空間を上手に利用することができるようになることが求められている。

多くの球技の指導で,ボール操作は,練習を繰り返すことで一定の技術を身につけることができる。より困難なのは,攻撃する空間を認知し利用することである。単元に割ける時間数では,十分な成果はあげにくい。そこで下位教材としてではあるが,ボールを手で扱いながら,より空間の使い方に重点をおいた,今回のザースボールを紹介したい。

-ザースボールの概略-(第4回東海大学学校体育授業研修会資料より)

 ①競技場
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②主要なルール

4 本時の指導

1 本時のねらい

(1)ゲームを通して,スペースへの移動,位置の取り方,味方と相手の位置関係の認識(思考・判断),互いの声のかけ方(態度)を学ぶ。

(2) 投捕のボール操作技能の向上をはかる(技能)。

2準備

ホワイトボード,マーカー,ストップウォッチ,ホイッスル,得点板, コーン
  コート(バスケットボールコートと40m×20mコート)
 ビブス,バレーボール(中学生用),ハンドボール2号球
 班編成:男子3チーム(7人×2+6人=20人) 女子3チーム(7 人×3=21人)

3授業展開(略案)

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