指導者については,事故の発生が責任問題にまでおよぶことにもなる。しかし,事故を恐れるあまり,安全だけを考えてコーチングが消極的になるようではいけない。そのためには,安全に対する正しい知識が必要である。

1.注意義務 

ハンドボールのコーチには,選手の生命,身体の安全を確保するために,必要な指導および監督をするという注意義務がある。注意義務には,内容的に「危険予見義務(危険な結果を予見する義務)」と「危険回避義務(危険な結果を回避する義務)」がある。

「危険予見義務」は,ハンドボールコーチとしてその指導をするに当たって,スポーツ活動に一般的にみられる危険はもちろんのこと,ハンドボール特有の危険を前もって知る(見通す)ことによって,事故を未然に防ぐ配慮と備えをする義務である。

「危険回避義務」は,前もって事故を未然に防ぐ配慮と備えをしたにも関わらず,危険な状況に向かう恐れがあるとか,向かっていると感じたときには,ただちに正しく状況判断をして的確な指示を出すとともに機敏な行動をとるなど,あらゆる方法を講じて事故を避けるように努めることである。 

したがって,コーチは事故を防止して安全な指導をするために,ハンドボール活動における事故発生要因に十分留意するとともに,予測できる事故との関連を1つひとつ取り上げておき,事故を未然に防ぐための防止策を講じておかなければならない。

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≪うさぎ跳び≫

うさぎ跳びは,トレーニング効果はほとんどなく,疲労骨折,半月板損傷,膝の皿の下にある脛骨の上部,脛骨結節に骨が飛び出してきて痛むオスグッドシュラッテル病などの弊害がある。

2.ハンドボールの傷害 

ハンドボールの傷害で特徴的なことは,下肢の足関節,膝関節に傷害が多いということである。特に女子における膝の傷害の多さは特筆されよう。ドイツでの報告によると,膝の傷害は7%程度ということで,日本のトレーニング方法に問題があると思われる。 

これらの原因としては,オーバーユース(使いすぎ),基礎体力の不足,床(地面)の状態,アンフェアなプレー,プレーヤーの技術の未熟,ウォーミングアップの不足などがあげられる。 

これらの傷害の予防のためには,原因を取り除くことはもちろんであるが,第1にゆとりの指導が大切となろう。また,ストレッチング,アイシングなどで

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